日本キリスト教協議会(NCC)平和・核問題委員会(平良愛香委員長)は1月28日、原子力発電所の新規建設やプルサーマル計画の白紙撤回を求める声明をホームページ上に公開した。
今回公開されたのは、上関原発(山口県熊毛郡上関町)建設の即時停止及び全ての新規原発建設計画の撤回を求める声明と、玄海原発(佐賀県東松浦郡玄海町)のプルサーマル発電の即時停止及びプルサーマル計画の撤回を求める声明の2つ。上関原発に関してのものは昨年12月11日付で鳩山由紀夫首相、直嶋正行・経済産業相、二井関成・山口県知事 、福田督・中国電力取締役会長、山下隆・同社取締役社長に宛てて、玄海原発に関してのものは昨年12月24日付で鳩山首相、直嶋経産相、古川康・佐賀県知事、眞部利應・九州電力代表取締役社長に宛ててそれぞれ提出された。
上関原発に関しての声明は、中国電力が昨年9月10日に漁民や環境団体の反対を無視して、同原発予定地の海域埋め立て工事に着工したことを受けて提出されたもの。NCCは声明の冒頭で同計画を「前代未聞の『砂上の楼閣建設計画』」と厳しく非難している。
この声明では原発全般についても言及。前政権(自民党)は「炭酸ガス問題を隠れ蓑」に経済性を無視し原発に注力してきたが、原発は発電以外の諸行程で石油を大量に消費、また電気出力の変動分は火力に頼らざるを得ないため「炭酸ガスの抑制には効果がない」と指摘し、事実「原発による発電量の増加と共に、火力による発電量も年々増加の一途をたどっている」としている。また原発労働による被曝は「正規社員に比して下請け労働者が圧倒的に多い」、平常運転で環境に放出される放射能による被曝者もまず「原発を押し付けられた貧しい住民」と言及し、原発が「社会差別構造の上に成り立っている事は明らか」と糾弾している。
さらに日本の原発が全て地震地帯に建設されていることに触れ、「老朽原発や、柏崎刈羽のように傷ついた原発を無理に運転して万一原発震災に見舞われれば、人的にも経済的にも取り返しのつかない大損害を被ることは明らか」と懸念を表明。これらの状況は「全て前政権の誤ったエネルギ−政策によってもたらされたもの」とし、「新政権が誕生した今こそ、そのエネルギ−政策を問い直し、原発から脱却し、安全で持続可能な新エネルギ−の利用に方向転換すべき時」と訴え、政府及び原子力関係機関に対して、(1)同原発建設の即時停止、(2)全ての新規原発建設計画の白紙撤回、(3)稼働中原発の順次廃炉、(4)日本のエネルギ−政策の再検討と安全で持続可能なエネルギ−開発への注力を求めている。
一方、玄海原発に関しての声明は、同原発が昨年11月5日にプルサーマル発電の試運転を開始し同12月2日に営業運転に入ったことを受けて、プルサーマル計画の実施に踏み切った九州電力とそれを容認した佐賀県議会、さらに原子力政策を推進する政府に対し抗議したもの。
「『核燃料サイクル』の一環で、資源の有効利用」と政府と電力会社が説明してきたプルサーマル計画だが、同計画は事実上「コストがかかるものであることは明らかになっている」としたうえで、ウラン燃料用炉として設計された原子炉でウランとプルトニウムの化合物であるMOX燃料を燃やすことの安全性が保障されていない同計画は「地域住民のみならず地球規模ですべての生命を脅かす『実験』でしかない」と指摘。さらに使用済みMOX燃料の具体的な処理方策も全く検討できない「最早『核燃料サイクル』そのものが破綻している中での暴挙・愚挙と言わざるを得えない」と訴え、(1)同原発におけるプルサーマル発電の即時停止、(2)全プルサーマル計画の中止、(3)「核燃サイクル」計画を含む政府の原子力政策の見直しを求めている。