【CJC=東京】クリスマスを控え、バチカン(ローマ教皇庁)のサンピエトロ広場にはバチカン職員が製作した大型プレゼピオ(イエスの降誕を再現した馬小屋の模型)が飾られ、その隣には金銀の飾り玉で覆われた大きなツリーが立てられた。教皇ヨハネ・パウロ2世の希望により、1982年から、サンピエトロ広場にも大きなプレゼピオともみの木が設置されるようになった。
教皇ベネディクト16世は24日午後10時からサンピエトロ大聖堂で主の降誕の夜半のミサを司式した。教皇が30人の枢機卿を率い金の十字架を掲げて祭壇まで行進する入堂行列の際、精神不安定な女性スザンナ・マヨロさん(25、イタリアとスイス国籍)が警護柵を乗り越え、警備員の制止にもかかわらず、教皇に近づくと、教皇のパリウムをつかんでバランスを失わせ、教皇を床に引き倒した。教皇はすぐに立ち上がり、行列を再開し、ミサを最後までささげられた。バチカンによると、この女性は情緒不安定で、昨年も同様の行為をしようとして制止されていたという。
教皇に怪我はなかったが、一緒に行列を行っていたロジェ・エチェガレイ枢機卿(87)が転倒し、大腿骨の頚部を骨折した。枢機卿はジェメッリ病院に入院し、手術を受けることになった。
教皇を引倒した女性も、必要な治療を受けるために医療施設に入院した。女性はバチカン警察の取り調べに対し、「教皇を抱きしめたかっただけ」と話しているという。
教皇は25日正午、サンピエトロ大聖堂の中央バルコニーに立たれ、ローマと全世界に向けた祝福とメッセージ「ウルビ・エト・オルビ」を送った。教皇は日本語を含む世界の65言語で主の降誕のお祝いの言葉を述べた。
教皇はメッセージで、世界金融危機や戦争、紛争の影響を受けている人々の心が、希望と喜びで満たされるよう祈った。教皇はまた、自然災害や貧困に苦しむ人々、特に自宅からの避難を余儀なくされた人々の受け入れを、カトリックが呼びかける姿勢にあることを強調した。
「今日、深刻な経済危機はもとより、倫理的危機に瀕し、さらに戦争や紛争の傷にまみれた人類家族のために、人間に対する真理と分かち合いの精神をもって、教会はあの羊飼いたちと一緒に『ベツレヘムへ行こう』 (ルカ2・15)、そこに私たちの希望を見出すことができるだろうと繰り返す」と教皇は指摘した。
バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇はさらに、「『私たち』教会は、中東の国々にも存在する。特に苦難の中にあるイラクをはじめ、この地域に生きるキリスト教徒たちの小さな群れのことを案ぜざるを得ない」「教会としての『私たち』は、スリランカでも、朝鮮半島、フィリピン、他のアジアの国々でも平和と和解のパン種として活動している。アフリカ大陸において教会は、コンゴ民主共和国における様々な形の権力濫用の追放、ギニアやニジェールでの人権蹂躙や対話拒否からの開放、マダガスカルでの内部分裂の克服と相互受け入れの実現など、神への祈りの声を上げ、たとえ悲劇や試練や困難にあっても人々が希望に召されていることを伝え続けている。ヨーロッパや北アメリカにおいても、『私たち』教会は、利己的なメンタリティーや技術至上主義の克服、まだ生まれ出ていない子供たちをはじめとするすべての貧しく弱い人々の尊重、共通善の促進のために働きかけている。また教会は、中央、南アメリカの国々においても、いかなるイデオロギーも代わることの出来ない真理と愛を実現し、決して取り去ることのできない各自の人権尊重、全人格発展の必要性を叫び続け、一致の源である兄弟愛と正義を告げ知らせている」と述べた。
「教会はその創立者キリストの命に忠実に従い、自然災害に苦しむ人々、社会の貧富に関わらず困窮している人々にいつも連帯を示す」として、教皇は、多くの人々が飢えや民族闘争、環境悪化から逃れ、故郷を捨て外国に移住せざるを得なくなっている、と指摘し、教会は迫害や差別や攻撃や無関心、時には敵意にもかかわらず、主であり師でもあるキリストと同じ運命を共有し、どこにおいてもその福音を告げ知らせる、と語った。