「進化論などの科学と信仰は両立する」という立場をとる米国の著名な生物学者フランシス・コリンズ氏(59)が最近、ローマ教皇庁科学アカデミーの会員に選出された。
10月に開かれた全体会議で、教皇ベネディクト16世から会員の記章を授与された。現在の会員は95人で、うち28人がノーベル賞受賞者。日本人では過去に故・湯川秀樹氏ら6人が選ばれている。
コリンズ氏は、ヒトゲノム計画に参加して遺伝子の全塩基配列の解読に成功した著名な生物学者。神の存在を信じる熱心なクリスチャンでもあり、進化論などをテーマに多数の教会行事で講演している。
「なぜわたしは存在するのか」「人生の意味とは何か」といった、人間が生きるうえで最も重要な質問に対する答えは信仰を通して得られるが、科学では得られない。科学は「どのように」という質問に強いが、「どうして」という質問には答えられない。「物質世界について知り、人体のすばらしい機能を発見することを通して、神の豊かな愛とご計画の一端を垣間見ることになる。その意味で、科学は賛美であり得るし、そうあるべきだ」と、コリンズ氏は語っている。
93年から08年まで国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)所長、医学研究所所長などを歴任し、遺伝病の責任遺伝子の発見、数々の業績を残している。07年には米国市民向けの最高位勲章である大統領自由勲章を授与。今年8月にはオバマ大統領の推薦で国立衛生研究所(NIH)所長に就任し、現職。著書に『ゲノムと聖書』(NTT出版、2008)。
同アカデミーは1603年創立。現在では、教皇が生命倫理、環境問題など自然科学にかかわる問題について公式見解を発表する際、会員らの論議を参考にするなどしている。