国連総会で子どもの権利条約が採択されてから、20日で20周年を迎える。2015年までに5歳未満で亡くなる子どもの数を1990年比で3分の1に削減すること、これが、00年に国連サミットで採択された「ミレニアム開発目標」である。しかし、5歳未満児の死亡数は目標ラインを現在も上回っており、取り組みのさらなる充実が緊急に求められている。世界では、今もなお3秒に1人の子どもが、5歳の誕生日を迎えることなくその尊い命を失っている。
キリスト教精神に基づき、貧困で苦しむ世界の子どもたちを支援する国際NGOワールド・ビジョン・ジャパン(=WVJ、東京都新宿区)は6日、救えるはずの子どもたちの命を守るために日本で何ができるかを考えるシンポジウム「5歳を超えて豊かないのちを」を東京都内で開催した。貧困問題に関心のある市民ら約100人が集まり、専門家の話に耳を傾けた。
基調講演では、WVアフリカ地域統括事務所保健・HIV/エイズディレクターのメンフィン・ロハ博士が、アフリカの子どもたちの現状とWVの活動を紹介した。ロハ博士はまず、助産婦の不足、HIV、マラリア、栄養不良、肺炎など、アフリカで5歳未満の子どもが死亡する主要原因について説明。現地の抱える問題として、保健システムの脆弱さや物流の困難さを指摘した。
そのうえで、保健制度の強化や地域の状況に即した個々の戦略が必要であると強調。WVでは特に母子保健の充実に力を入れていると報告し、もっとも弱い立場におかれている人々への支援が充実すれば、より多くの命を救うことができると訴えた。
パネルディスカッションでは、外務省国際協力局専門機関室長の長岡寛介氏ら6人のパネリストが、国連や政府、企業、メディア、NGOなどそれぞれの立場から「日本の私たちにできること」をテーマに話し合った。
長岡氏は、昨年5月の第4回アフリカ開発会議や世界エイズ・結核・マラリア対策基金における日本政府の取り組みを紹介。日本政府が、エイズやマラリアなど個々の病気に着目した対策と、保健システムの充実化などを同時に行う、包括的な取り組みを目指していることを説明した。また、減少傾向の続くODA予算にも触れ、日本の国際援助の実績が低下していることを今後の課題として指摘した。
住友化学ベクターコントロール事業部事業部長の水野達男氏は、同社が実施しているマラリア予防事業を紹介。同社の開発した長期残効型防虫蚊帳の技術を現地企業へ無償提供し、雇用創出と地域の経済発展に貢献していることを報告した。
国連児童基金(ユニセフ)東京事務所オペレーションズ・マネージャーの草道裕子氏は、実際に現地で支援を受け取る人々の深刻な現状を訴え、日本の国際援助の重要性を強調した。
日本経済新聞社編集委員の原田勝広氏は、現代を「共感の時代」と表現し、アフリカでお腹をすかせる子がより身近に感じる時代ではないかと語った。また、NGO・企業間での協力関係の重要性を強調した。
WVJ海外事業部開発援助事業課プログラム・オフィサーの木内真理子氏は、WVの実施するルワンダとスリランカ、タンザニアでの支援活動を紹介。子どもたちの養育を地域全体で支えるためのシステムを構築する具体的な取り組みや、現場で直面する問題点、実際の成果などを報告した。
木内氏は、「いろいろな形で途上国の子とかかわりを持つ機会を持って欲しい」と、支援活動への積極的な市民の参加を呼び掛けた。