熊本市は25日、同市の慈恵病院(蓮田太二理事長)が運営する、親が育てられない子どもを匿名で受け入れる「赤ちゃんポスト」(通称:こうのとりのゆりかご)に、運営開始後2年目となる08年度には25人の子どもが預け入れられたことを発表した。
同制度は07年に国内初の取り組みとして始められ、1年目の07年度は17人の子どもが預け入れられた。現在でも日本では唯一の取り組みで、2年間での預け入れ総数は42人となった。
蓮田理事長は26日、記者会見を開き「(預け入れには)わが子の命を助けたいという切なる思いがあった。母親の子どもに対する深い愛情だと解釈している」(時事通信)と語り、育児放棄の助長とはなっていないことを強調。初年度に比べて預け入れ数が増えたことについては、同制度が社会で知られるようになったからではないかとの考えを示した。
同市の発表によれば、08年度の内訳は、男児13人、女児12人。生後1カ月未満の新生児21人、生後1カ月から生後1年未満の乳児3人、生後1年から就学前の幼児1人であった。
父母らとの事後接触や児童相談所の社会調査などの確認によってわかった範囲では、今回預け入れがあった父母らの居住地は九州8人、近畿3人、中部3人、関東8人で、全国から預け入れが相次いだ。
新生児の産み捨てや若年層の中絶防止などを目的に、同様の取り組みはドイツではすでに00年に導入されており、ドイツ国内には70カ所以上の預け入れ所が設置されている。
同制度については、違法とは言い切れないとして厚生労働省が同市に対して設置の認可を出して始まった。しかし、保護責任者遺棄罪や児童福祉法、児童虐待防止法などで接触する部分があるなどと賛否が分かれている部分がある。
西日本新聞によれば、舛添要一・厚生労働相は26日の閣議後の会見で同制度について「国民的な議論が必要」と述べ、蓮田理事長はそれを受け「預けられた子どもが幸せに育っていくためにも、非常に重要なことだ」(同紙)と、同制度について今後も話し合いが重要だとの考えを示した。
慈恵病院は、カトリックの「マリアの宣教者フランシスコ修道会」によって1898年(明治31年)に創設された。現在は近代的医療の展開をめざして修道会から経営を移管し、「キリストの愛と献身の精神の基に、病に苦しむ方々へ高度で暖かい医療と看護を尽くし、地域への貢献と人々の幸福に役立つこと」を理念に運営されている。