【CJC=東京】エジプト政府は新型インフルエンザ対策のため4月29日、国内で飼育されている豚30万〜40万頭を全頭処分にすることにし、作業を始めたと発表した。養豚業者に対して豚の移動を禁止した。処分に対しては1頭あたり50〜250エジプトポンド(約880〜4400円)の補償金を支払う。
世界保健機関(WHO)は豚が人への感染を媒介しているとの証拠はないとして、エジプト政府の「間違った判断」を批判しているが、カイロ全体で約6万3000頭のうち、すでに1万頭を処分したという。5月2日には北部アレクサンドリアで作業を開始した。
政府によると、鳥インフルエンザの人への感染例は68件報告され、26人が死亡しているが、豚インフルエンザの感染は確認されていない。
豚肉食を禁じるイスラム教徒が約90%を占めるエジプトでは、約10%に当たる少数派のキリスト教系のコプト教徒が豚を所有。ごみ処理業者がごみを飼料にするなどして飼育している事例も多い。カイロには「ザバリーン」(ゴミの人)と呼ばれる、主にコプト教徒の住民が約5万人いる。民家から回収した生ゴミで飼育した豚を売り生計を立てている。全頭処分は収入の大幅減につながる。
カイロのマンシヤト・ナスル地区ではキリスト者住民約300〜400人が3日、豚の押収に反対して路上を封鎖、警官隊に投石した。警察は、ゴム弾と催涙ガスを使用、8人が負傷、内2人は警察に拘留された。
政府は「飼育環境が不衛生で、野放しにできない」と指摘しているが、新型インフルエンザの世界的な拡大が政府に、不衛生な豚飼育を駆逐する絶好の口実を提供したとの見方も広がっている。