パキスタンで24日、キリスト教徒の結婚可能な最低年齢を引き上げ、男女共に18歳とする改正法が成立した。最低年齢を女子は13歳、男子は16歳としていた1872年成立の「キリスト教結婚法」を改正するもので、現地の教会や人権団体からは歓迎の声が相次いでいる。
改正法では、結婚の正式な成立と登録は、当事者双方が18歳になってからと規定されている。年齢について争いがある場合は、電子化された国民身分証明書、出生証明書、学歴証明書、あるいはそれらがない場合は健康診断書など、入手可能な書類に基づいて年齢を決定する権限が裁判所に与えられている。
パキスタンの迫害下のキリスト教徒を支援する超教派団体「CLAAS」の英国ディレクターを務めるナシル・サイード氏は、米キリスト教メディア「クリスチャンポスト」(英語)の取材に対し次のように述べ、改正法の成立を称賛した。
「この法改正はキリスト教界の長年の要求でした。改正法は、未成年のキリスト教徒の少女の強制結婚を防止し、彼女たちの健康、教育、そして総合的な幸福を守るために重要な役割を果たすでしょう」
カトリックメディア「アジア・ニュース」(英語)などによると、改正案はキリスト教徒のナビード・アミール・ジーバ議員が提出。2月に元老院(上院)を通過し、今月9日に国民議会(下院)が全会一致で可決。アシフ・アリ・ザルダリ大統領が24日に承認したことで成立した。
パキスタン・カトリック司教協議会(CBCP)は、「正義と平和全国委員会」(NCJP)を通じて、改正法への熱烈な歓迎を表明。CBCP会長のサムソン・シュカルディン司教は、NCJPナショナルディレクターのバーナード・エマニュエル神父、NCJPエグゼクティブディレクターのナイーム・ユサフ氏と共に、改正法を称賛する共同声明を発表した。
「私たちは、この法案を全会一致で可決した議会全体に心から感謝の意を表します。この法律は、私たちの若い少数派の未成年少女を強制改宗や児童婚から守る上で、極めて重要な役割を果たすでしょう。私たちは、政府が強制改宗を犯罪として取り締まるためのさらなる措置を講じることを望みます」
また、ユサフ氏は次のようにも語った。
「この法案の素晴らしいところは、パキスタンの全ての主要な教会の同意を得て発表されたことです。私たちは、改正法が少女たちを守り、基本的権利、特に教育、健康、その他の付随的権利を保障することを期待しています」
パキスタンの人権団体「連帯平和運動」(MSP)の2014年の調査(英語)によると、イスラム教徒が多数派を占めるパキスタンでは、ヒンズー教とキリスト教のコミュニティーから、女性や少女が毎年千人近く誘拐され、強制結婚やイスラム教への強制改宗に直面しているとされている。
米迫害監視団体「国際キリスト教コンサーン」(ICC)によると、性暴力事件では、宗教問題が持ち込まれ、宗教的少数派の被害者が不利な立場に置かれることも多くある。加害者は、宗教的要素を持ち込むことで宗教的偏見を利用し、犯罪を隠蔽(いんぺい)して正当化できることを知っているためだ。
米国務省の「信教の自由に関する国際報告書」(23年版)は、英シンクタンク「社会正義センター」の報告を引用し、23年には少なくとも「103件のキリスト教徒、ヒンズー教徒、シーク教徒の女性と少女の強制結婚と強制改宗」があったと報告している。
国連人権高等弁務官事務所の発表(英語)によると、国連の専門家パネルは1月、パキスタンにおける宗教的少数派の未成年の少女や若い女性の誘拐、強制結婚、強制改宗の増加に警鐘を鳴らしていた。同パネルはパキスタン政府に対し、「こうした行為を抑制し、被害者のための正義を確保するための早急な取り組み」を求めていた。