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リビングストンの生涯

アフリカ奥地に神の愛を―リビングストンの生涯(15)栄光の後に悲しみが

2021年12月15日17時59分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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アフリカ奥地に神の愛を―リビングストンの生涯(1)悲しい伝説+
リビングストン(1813〜73、写真:Thomas Annan)

1856年12月。リビングストンは懐かしい祖国英国に帰った。人々はアフリカ大陸の開発に成功した英雄を熱狂的に迎えた。リビングストンはトマス・スティール大佐やオースウェルとも再会できた。メアリー夫人と子どもたちは、スコットランドでリビングストンの母や姉たちと一緒に平和に暮らしていた。

12月15日は王立地理学会が彼を晩餐会に招き、16日にロンドン伝道協会も彼を晩餐会に招いた。そして彼はあの懐かしいリスドン・ベネット博士とも会うことができたのだった。彼が大通りを歩けば人々が押し寄せてきてサインを求め、新聞社や雑誌社の記者はインタビューするために彼を追い回した。

オックスフォード大学とエディンバラ大学での講演では、彼はアフリカの窮状を訴え、現地の人々は白人よりもはるかに純粋で、素直にキリスト教を信じ、救われる人が多くなったことを語った。すると学生たちは感動し、話し合った結果、ケンブリッジ、オックスフォード両大学の協力によって「大学伝道団」というものを作った。そして、マッケンジーという人が監督となった。

その後リビングストンに数々の栄誉が授けられた。「ロンドン名誉市民」そして「グラスゴー大学の名誉学位」などである。出版社は彼の手記をまとめ11月『宣教紀行』として出版し、たちまちベストセラーとなった。

そのうち、ビクトリア女王が彼を招いた。彼女は自分の名前が付けられた滝に興味を持ち、彼の開拓事業に対し、ねぎらいの言葉を掛けた。そして、彼が原住民を愛をもって教化したことに対し特別に評価した。

「何か望むことがありますか?」女王は尋ねた。すると、リビングストンは言った。「女王様。あなたのお力で奴隷制度を廃止してください」。すると、女王は悲しそうに微笑して首を横に振った。「私の力には限りがあります。けれども駐在のポルトガル大使は話の分かる人なので、奴隷の輸出を抑えることができるでしょう」

「私は再びアフリカに行くので、わずかなりともご支援を頂けるとありがたいのですが、女王様」。リビングストンの言葉に女王は驚きつつも、応援部隊を作らせてアフリカまで同行するよう取り計らってくれたのだった。

こうして1858年3月10日。リビングストンは英国政府の援助によってペディングフィールド中佐を航海長とする6人の探検隊を組織して、家族と共に再びアフリカに向かった。

しかしながら、今度は悪いことばかりが続いて起きた。出発後、間もなくメアリーが病気になり、ケープタウンに着く頃には悪化して起き上がることもできなくなってしまった。悪いことに、ケープタウンには両親のモファット夫妻が来ており、彼らは病み衰えた彼女を見て仰天した。そして強引に夫人と子どもたちを連れて帰ってしまった。リビングストンは再び一人ぼっちになり、旅を続けた。

キリマネからテーテに出、最も危険な急流といわれるゲブラバサ急流を通ってザンベジ川をさかのぼろうとすると、次の障害が起きた。マ・ロバートという小さな蒸気船を作った男が悪賢い男で、古いボイラーと欠陥のあるエンジンを船に取り付けたので、間もなく船は故障し、日程もすべて狂ってしまった。さらに悪いことにゲブラバサ急流に差し掛かると、船が転覆してしまい、リビングストンの大切な日記や植物・動物の研究ノート、資料がすべて失われてしまったのである。

「この旅はどうもついていない。一応英国に帰って準備し直しませんか」。ペディングフィールド中佐が言ったが、リビングストンは強引に進んだ。そのうち、従者たちの多くが体の不調を訴え、ひっきりなしに襲ってくる蚊の大群や焼け付くような暑さ、飢えなどのために、一行の体力はとみに衰えていった。やがてザンベジ川の一番上流にある滝に到達したとき、リビングストンは再びマラリヤにかかり、半死半生の体を引きずるようにして進んだ。

やがてポルトガル領に入り、見知った町や村を通ったとき、彼は目を疑った。以前と様子がまったく違っており、畑も小屋も、道も――すべて跡形もなく消えていた。そしてあたりは無残に荒らされ、放置された死体をハゲタカがついばんでいた。現地の黒人たちは彼の姿を見るや、大声を上げて逃げ去った。

「おおい、私だよ」と、彼は叫んだ。「リビングストンは大うそつきだ。ポルトガル人の回し者じゃないか!」一人が憎しみを込めて叫んだ。一体何があったのだ。彼はぼうぜんと立ち尽くしていた。

*

<あとがき>

英国に帰ったリビングストンは、一躍英雄と見なされ、多くの人から大変な歓待を受けます。ロンドン伝道協会や王立地理学会から晩餐会に招かれ、大通りを歩けば通行人からサインを求められ、新聞社や雑誌社はインタビューをするために彼を追い回す始末でした。

その後、「ロンドン名誉市民」「グラスゴー大学名誉学位」など数々の栄誉が授けられます。こうして、祖国で素晴らしい日々を過ごした後、再び彼は政府の援助のもとアフリカへと向かいました。

しかし、今度は栄光の日々の中では予想すらしなかった困難が次々と襲い掛かります。悪天候と劣悪な環境の中でメアリーが病気になり、それが原因でモファット夫妻との間に溝ができたこと。悪い技師のためにエンジンが故障し、船が転覆したことから大切な研究資料が失われたこと。そして、ようやく到着したアフリカで彼を待っていたものは、あまりにも過酷な現実だったのです。

アフリカ奥地に神の愛を―リビングストンの生涯(1)悲しい伝説
(画像:栗栖ひろみ著『信仰に生きた人たち 第3巻 リビングストン』[1982年、ニューライフ出版社〕)

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。80〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、82〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、90年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。12年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。15年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。その他雑誌の連載もあり。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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