救世軍が毎年クリスマスから年末の時期にかけて行っている街頭募金活動の「社会鍋」が、日本で始まってから今年でちょうど100年を迎えた。三脚に鍋というスタイルで世界各国で行われるこの募金活動は、19世紀末の不況期に失業困窮者の救済を目的に米国で始まったもので、日本でも日露戦争後の不況時期に失業者のためにと1909年(明治42年)から始められた。
今年も10日から全国各地で募金活動が始まり、その様子が各地の地元紙などで取り上げられている。新潟市では13日、他教会の有志らとも協力しての合同の募金活動が行われた。社会鍋をやって50年という救世軍新潟小隊の佐藤静子小隊長は、「まちの風景はずいぶん変わったが、募金をしてくれる人の心の温かさは変わらないですね」(新潟日報)などと思いを語る。
また、仙台市では市中心部のデパート前で募金の呼びかけが行われ、同仙台小隊の五十嵐光男小隊長は「これまでの市民の善意に感謝し、助け合いの精神を次の世代に受け継ぎたい」(河北新報)などと話した。
「集金鍋」「慈善鍋」などとも呼ばれ、現在は俳句の季語としても用いられるほどに親しまれるようになった社会鍋。当時は、正月用のもちや味噌、みかんなどを貧しい家々に贈ろうと募金が行われたが、今は国内外の災害支援や街頭生活者への支援、慰問活動などに当てられる。
昨年は東京地区だけでも約1900万円の募金が寄せられた。通常は年末に行われるが、大きな災害が起こったときにもその都度行われ、今年はミャンマーのサイクロン被害、中国四川省大地震の救済のために臨時で募金活動が行われた。
今でも街頭では明治時代とそれほど変わらない和風の鉄鍋と三脚、紅白のたすきで募金が呼び掛けられているが、最近は現金書留や、郵便振替、オンラインでのクレジットカードによる募金も行われている。発祥地の米国ではオンライン募金が4年前から始められ、昨年は約110億円が集まった。しかし、最近の不況の影響で募金額の伸びが下火になりつつあり、今年は携帯電話やソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などを利用した新しい形の募金も行われている。