今年創立20周年を迎える聖学院大学総合研究所(埼玉県上尾市、大木英夫所長)は15日、記念の学術セミナーを東京都北区の聖学院中学校高等学校で開催した。「三位一体の神 一神教批判と多元主義を超えて」をテーマとした今回のセミナーでは、クリストフ・シュヴェーベル教授(テュービンゲン大学)、アリスター・マクブラス教授(ロンドン大学)ら海外の神学者のほか、同研究所の深井智朗教授が講演。牧師や神学生らが多数参加した。
今日の日本の思想界では、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教を『一神教』の伝統に整理し、それに東洋的多神教を対峙させるという類型化やそれに基づく文明論やキリスト教的ヨーロッパ世界への批判がしばしば見出される。しかしこの対立図式は本当に正しいのであろうか――。1988年の大学設置とともに諸学問間の対話を深めることを目指して創設された同研究所は、このような近年の状況をふまえて、キリスト教会とその神学の根本問題である三位一体論を歴史的、社会的、神学的に改めて検討したいとして今回のセミナーを開催した。
シュヴェーベル教授は「徹底的唯一神教と三位一体論」と題して、マクブラス教授は「理神論か、有神論か、三位一体論か―自然神学の場合」と題してそれぞれ講演。深井教授は、日本ではキリスト教の神概念が唯一神教として捉えられ、そのためにキリスト教が排他的または個人主義的であると見られてきたと指摘。三位一体論と近代世界の今後の接点について模索した。
当日は講演のほかに質疑応答の時間も多く持たれ、参加者から「三位一体ではない唯一神を信じる人々は救われるのか」「多元主義に対してはどのように対応すればよいのか」など質問が出された。
同研究所では今回のセミナーのほかにも創立20周年を記念して様々なイベントを企画している。同研究所組織神学研究センターでは、今年5月から「なぜ日本に神学が必要なのか」を主要テーマとして10回の連続講座を行なっており、今月21日には「なぜ日本に教会音楽が必要なのか」、来月25日には「なぜ日本にキリスト教教育が必要なのか」などが行なわれる。