【CJC=東京】カトリック教会日本司教協議会の代表4人は4月25日、教皇ベネディクト十六世と約1時間、『新求道共同体』(ネオカテキュメネイト)と同団体が高松教区内に設立した高松教区立国際宣教神学院『レデンプトリス・マーテル』が引き起こしている「深刻な問題」について会見した。
バチカン(ローマ教皇庁)を訪問したのは岡田武夫・東京大司教(司教協議会会長)、池長潤・大阪大司教(同副会長)、高見三明・長崎大司教、溝部脩・高松司教の4人。
日本から司教がバチカンを訪問し、協議したのはこの5カ月では3回目。「そうたびたび来ることは好ましくないが、問題の重要さからして解決しなければならないことだ」と岡田大司教は、ローマでUCAN通信に語った。
昨年12月のアドリミナ(定期訪問)の際、司教団は自らの問題意識を教皇だけでなく福音宣教省(長官=イヴァン・ディアス枢機卿)の高官にも提起した。日本は宣教地とされ、司教は同省の管轄下にある。英カトリック週刊誌『タブレット』は同省の長官イヴァン・ディアス枢機卿が新求道共同体に好意的で、その活動を守るために介入した、と見ている。この4月にも司教団代表は、福音宣教省関係者と議論したが、新求道共同体を支持する雰囲気が感じ取れたところから、教皇に再度直接訴えることにしたようだ。
UCAN通信によると、岡田大司教は12月15日、司教団を代表して教皇に「一つの問題は、新求道共同体と高松教区立国際宣教神学院だ。これは深刻な問題だ。日本の小規模なカトリック教会では、新求道共同体のような強力なセクト的な活動は、分裂と対立をもたらす存在だ。それは教会の中に鋭い痛みである分裂と抗争を引き起こした。私たちは、問題を克服するため、全力で闘っているが、もし解決策が見出されるとすれば、それは日本の教会に関する聖下(教皇)の考えが最も重要であり、強く望まれる」と述べた。
新求道共同体は1964年にスペインで設立された。現在は2万を越える「共同体」が世界105国に存在し、会員は100万人と言われる。高松神学校は共同体が設立した世界中の73校の一つで、いずれも教区司教の下にある。アジアでは香港、インド、日本、パキスタン、フィリピン、台湾に全6校ある。
UCAN通信によると、高松の溝部司教は、自らもアドリミナで、教皇と個人的に接見した際、教区の問題について話したと言う。しかし教皇は12月15日に訪問した日本の全司教に演説した時、その件について言及しなかった。それから4カ月後の4月25日、教皇は岡田大司教たちと詳細に討議した。
神学校は前任者の深堀敏司教が設立に同意したが、深刻な問題が相次いで、緊張が高まり、後任として2004年に着座した溝部司教が閉校を決めた。司教協議会は溝部司教を支持したことを岡田大司教はUCAN通信に確認した。
共同体側は別の司教の支援を得ようと動き、初めに1人が、学校支援に同意したものの、他司教との議論の後に、反対を決め福音宣教省と共同体に通知したという。
4月25日の会見の際、池永大司教は、実態に関する詳細な概要を教皇に提出した、とUCAN通信は報じている。岡田大司教は「教皇は非常に注意深く私たちの言うことを聞いた。私たちを理解しようとしており、非常に真剣だ」とUCAN通信に語った。「教区立神学校は閉校になる。教皇庁は、今年閉鎖されることに同意した」と言う。
司教たちは、共同体の「思考方法」と日本文化、典礼などの問題への「態度」に関して、その動きに「重大で深い」問題をなお感じている、と岡田大司教はUCAN通信に説明した。バチカンがそのことを理解しているか、との質問に、岡田大司教は、「まだ、私たちとはギャップがある」ものの、事態は「進展している」と感じる、と語った。教皇が聴いてくれたことが大きな励ましになったと言う。