長年にわたって、「西欧の宗教」「白人の宗教」といったイメージが持たれてきたキリスト教。しかし、そんなイメージが数年後には大きく変わるかもしれない。
「キリスト教の新しい”顔”は、黒人女性になる」。女性神学者クウォック・プイラン博士が27日、米ケンタッキー州のレキシントン神学校で行われた特別講義で語った。米マサチューセッツ州の聖公会神学校で教授を務めるプイラン博士は、アジアのフェミニスト神学の第一人者、また脱植民地の神学者として知られている。
プイラン博士は講義で、07年時点では欧州が未だに世界で最も多くのキリスト教徒を抱える地域であり、その数は5億3200万人、次いで南米が5億2500万人、アフリカが4億1700万人であると指摘。しかし、2025年までには、欧州のキリスト教人口が5億3100万人に減少する一方、アフリカは6億3460万人、南米は6億3410万人に大幅に増加すると語った。
ゴードン・コンウェル神学校にある世界キリスト教研究センター(CSGC)のトッド・ジョンソン所長は、06年に報告書「米国の福音主義者、グローバル化世界における福音主義者」を発表し、報告書内で1900年のキリスト教徒はその80%以上が欧米出身であったが、2005年では45%だとしている。
アフリカにおけるキリスト教の発展について、世界教会協議会(WCC)で初のアフリカ出身総幹事となったサムエル・コビア氏は昨年12月、ワシントン・ナショナル大聖堂で行った講演で、アフリカのキリスト教は、米国のキリスト教に比べて「パートタイム」的なものというよりも、「生活すべてに染みわたる」ものとなっていると述べ、「アフリカ、特にサハラ砂漠以南におけるキリスト教は、一つの宗教としてだけはなく、人々にとって、国づくり、平和、和解といったことに貢献する機会のようなものになっている」と語っている。
プイラン博士はまた、進むグローバル化が、人権といった世界共通の価値観において、宗教の役割をより重要なものとするとし、宗教の進展によい機会をもたらすと強調した。しかしその一方で、自らの信仰やアイデンティティーを守るため、暴力に訴え出るといったマイナス面の影響も考えられることを指摘した。
今回の特別講義は、会場となったレキシントン神学校の第12代目校長ウィリアム・ダニエル・コッブ氏を記念して、1990年から開催されているもので、毎年著名な神学者や研修者が講師として招かれている。