イエス・キリストの精神に基づいた物心両面の飢餓対策を1981年以来続けている日本国際飢餓対策機構(JIFH)の特命大使・神田英輔氏が8日、大阪府堺市のプール学院大で行われた同大と桃山学院大の共同講演会「ジョイント・レクチャーズ」で講演した。テーマは「共に生きるって素晴らしい」。世界の約50カ国で続けてきた支援活動の実体験や、飢餓に関する様々なデータを紹介しながら、飢餓問題の原因、またその解決として目指すべき方向性を示した。
神田氏は講演で、バングラディッシュやエチオピア、フィリピン、インド、ペルーなどの様子を画像で紹介。5円で買うことが出来る粉ミルクを買えないために子どもを亡くしてしまう女性や、干ばつで食べるものがなく小石を口にする子ども、十分に食べられないで栄養失調の兆候が出ているストリートチルドレンなど、世界で飢餓・貧困に苦しむ人々の姿を伝えた。
「飢餓が原因で1分間に17人が死んでいる。そのうち12人は子ども」。トン、トン、トンと演壇を打ちながら、「1分間に17人というのは大体3秒に1人」と説明し、飢餓が切迫した問題であることを伝えた。
一方、穀物の自給率は、飢餓が深刻なエチオピア(85%)、バングラディッシュ(90%)、北朝鮮(78%)に比べて、日本は28%と圧倒的に低いのにもかかわらず、現在の飽食状態がある。これについて神田氏は、日本がこれまで貿易黒字、食糧・石油、平和を確保してきたため実現できたことだと指摘。「これを20年、30年後も確保できるでしょか」と問いかけ、条件が一つでもそろわなければ日本は深刻な飢餓に見舞われることを伝えた。
さらに、日本では現在、年間で3億人分(約5800万トン)の穀物を輸入し、そのうち1億人分(約1940万トン)を捨てていることを挙げ、「これを他国の人はどう思うでしょうか」と日本の問題点を指摘。食糧を輸入に頼らなくてはいけない状況にある日本が、このままでよいのかと訴えた。
「他者、自然界との関係を疎かにすれば、他者が滅び、結局は自分をも滅ぼすことになる」。飢餓の根本的な原因として、食糧の絶対量が少ないわけでもなく、飢餓に瀕する国の人口が多すぎるためでもなく、「人間の自己中心」「力、権力が人を幸いにするという価値観」があるからではないかと語り、「地球規模で共に生きること」が必要と訴えた。
当日は約90人が参加。参加者からは、「子どもたちへの食糧に対する教育が重要だと思った」、「5円で粉ミルクが買えるが、それさえも買えないことを聞いて驚いた」などの声が聞かれた。
同講演は01年から、共に聖公会系であるプール学院大、桃山学院大それぞれのキリスト教センターが共催で開催している。毎年、各大学のキャンパスが交代で会場となり、来年は桃山学院大で行われる。