イスラム教の宗派対立などで治安情勢の悪いイラクで、マリキ首相は27日、同国のカルデア人キリスト教指導者であるエマヌエル三世デリー・カルデア典礼バビロニア大主教から要請を受け、国内の少数派で危機に瀕しているキリスト教徒を保護、支援する約束をした。AP通信が伝えた。
イラクのキリスト教徒の大半はカルデア人であり、総人口2600万人のわずか3パーセントほど。米国による03年のイラク攻撃以前には約120万人近いキリスト教徒がいたが、現在はその半数の約60万人にまで減少した。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR )の調査によれば、イラク国外に逃亡する難民の約半数をキリスト教徒が占めるとされている。マリキ首相は、これらのキリスト教徒の出国に対して何らかの対応を取る用意があるとした。
今月17日には、教皇ベネディクト16世が新たに23人を枢機卿に任命したが、今回首相に要求を出したデリー大主教もその1人として選ばれた。任命は、信仰を理由に迫害を受けるイラクのキリスト教徒への支援の意味も込められていると見られている。
イラクでは、今月13日にミサに向かう途中の司祭2人が誘拐され、約200万米ドル(約2億2千万円)を要求され、その後開放されるという事件も発生している。