宗教的知識が少なく、純粋に学びを求める若い学生を狙い、サークル活動と偽った「布教」活動で霊感商法やマインドコントロールによる精神的な支配を続ける「カルト」団体は、日々巧妙に手口を変えて近づいてくる。その危険性を知ってもらい被害を少しでも食い止めようと大阪大学では、新入生全員を対象に、昨年から「カルト」対策のための必修講義を行い、今年も約2700人の学生が「カルト」の実状とその危険性を学習している。
同大では数年前から、学内に侵入してくる「カルト」に対して学生に注意を促し、他の大学や支援組織との情報交換を通して偽装サークルの実態「カルト」の実状を捉え、学生たちをカルトの被害偽りの教えから守ろうとする地道な努力を続けてきた。
今回の必修講義を行う背景には、カルトの反社会的な行為の間違った教えからくる学生たちへの悪影響が深刻であり、社会的に見ても許されざる行為であるという認識が、大学側に深く浸透してきたこともある。
講義を受け持つ教授の一人、学生生活委員会委員長の大和谷厚(やまとだにあつし)・医学部教授は「カルト対策は、予防が一番であると考えています」と述べ、新入生の段階でカルトに関する正確な色々な情報を伝えることの重要性を示した。
90分の講義では「カルトとは何か、歴史的な背景やどういう事件があったか、カルト団体の危険性、マインドコントロールや、実際の学内での具体的な勧誘手口、どういう風に逃げたらいいか」などを80分で伝え、残り10分で学生にレポートを書かせている。
大和谷教授によると、学生の提出するレポートや感想から、かなりの学生がすでにカルト団体の偽装サークルによる勧誘を受けていたことが分かったという。講義を受けた学生からは、「ああ、あの時のあれがそう(勧誘)だったのか」「(カルトは)他人事だと思っていたけれど、すごく近くにあった」といった感想が寄せられている。
毎年、希望に燃えて入学してくる学生の知的好奇心を誤った方向に向かわせないために、新たな知識の開拓を求めて集まる学生たちをいかに「誤った教え」から守るのか、大阪大学では今後も「カルト」対策の講義を続けていく方針だ。