ルーテル学院大学(東京都三鷹市)は16日、一般市民を対象とした公開企画「ルーテル市民大学」を同大で開催した。「これからの社会福祉の展望」と題し、厚生労働省社会・援護局長の中村秀一氏が講演。さらに、三鷹市、武蔵野市、世田谷区で実際に社会福祉に携わる、または携わった経験のある3人をパネリストとして招き、シンポジウム「自治体における社会福祉の展開を考える」を行った。学生や福祉関係者を中心に約160人が参加した。
地域に開かれた大学を目指して、同大が昨年から行っているもの。社会福祉、臨床心理、キリスト教の3つの学科に応じて年3回の開催を予定している。
中村氏は、「国」としての視点から社会福祉について説明。社会福祉に充てられる予算の変化や、介護保険制度(00年)の設置、社会事業法の社会福祉法への名称変更(同年)など制度や枠組みの変化から見て、日本の社会福祉の動向について解説した。また、少子高齢化や人口の減少など社会福祉を取り巻く今後の状況を話し、これからの社会福祉のありかたについて現在の問題点も指摘しつつ、新しいアイディア、制度、政策を紹介した。
シンポジウムには、パネリストとして岩下正樹氏(前三鷹市健康福祉部長、現三鷹市教育委員会教育部長)、長澤博暁氏(前武蔵野市福祉保健部長、現武蔵野市議会事務局長)、秋山由美子(世田谷区保健福祉部長)の3人が参加。地方分権化が進み、社会福祉において企画推進の責任を持つようになった自治体の立場から発言した。ルーテル学院大学の和田敏明教授(同大大学院社会福祉学専攻主任)がコーディネーターをつとめ、中村氏が助言者として発言した。
岩下氏は、三鷹市で今年度計画中の介護や特別な気配りが必要となる高齢者の把握と、災害時の全体的な把握を合わせる「福祉防災マップ」を紹介。福祉と防災を合わせることによって、高齢者からも抵抗感なく協力を得られる利点を説明し、今後、母子家庭や障害者へも対象を広げることが可能ではないかと話した。一方、長澤氏は「老人食事サービス」など、武蔵野市が全国に先駆けて実施した多様な福祉サービスを紹介。福祉に携わる者として必要とされる視点なども語った。秋山氏は、人口約82万人、その内65歳以上の人が約14万4千人と一部の他県に匹敵するほどの規模を持つ世田谷区の実態を挙げ、同区が力を入れている介護予防政策を紹介した。
ルーテル市民大学は、10月に臨床心理関連の企画を予定している。キリスト教関連の企画はまだ未定。昨年10月には「自殺予防に向けて」(臨床心理)、11月に「認知症高齢者―本人・家族への支援―」(社会福祉)、同月に「ボンヘッファー:激動の時代を行き抜いたキリスト者」(キリスト教)を開催している。問い合わせは、ルーテル学院大学総合人間学事務局(電話:0422・31・7920、FAX:0422・34・4481)まで。