同総会の「エキュメニカル・デー」に行われたトゥヴェイト総幹事のメッセージでは、神学、伝統的教義、地域文化の異なるすべてのクリスチャンが共にイエスの弟子として召されていることについて「海のように広がる弟子の働き」というテーマで講演を行い、超教派の弟子の働きの概念や諸教会がいかに社会正義と平和のために闘っていけるかについて神学的見解を参加者らと共有した。
トゥヴェイト総幹事は講演でマルコの福音書6章48節~51節を引用し、「『しっかりしなさい。わたしだ。恐れることはない。』と言われた。そして舟に乗りこまれると、風がやんだ」と言う御言葉を講演の最初に宣言し、「キリストにあるすべての諸教会が『しっかりする』時であり、復活されたイエス様が私たちと共におられるのですから、たとえ私たちを逆風の中に送られたとしても、その中でよりキリストの奥義を学ぶことができるのではないでしょうか。どんな恐れがあろうと、今はイエス・キリストに従い、より深いキリストの奥義を知ろうとする時です。その中で、『キリストが私たちの舟に共におられる』ことを知ることになるのではないでしょうか」と伝えた。
トゥヴェイト総幹事は、「舟」はエキュメニカルなフェローシップの象徴であるとし、「私たちは皆復活されたイエス様と共におります。WCCの交わりの中に属しています。私たちは世界中110カ国以上の諸教会に属する5億6千万人のキリスト教徒を代表する組織であり、その中には東方正教会、バプテスト、ルーテル、メソジスト、改革派教会、単立教会、連合教会なども含まれています。復活祭の潮流に乗って、とても適した時期に総会が行われています。今この時に、私たちの共通の未来、神様の教会に対する御心を識別し、『舟の中で私一人ではない』ことを今一度確認する時だと思います。世界中すべての主に召された弟子たち、荒波をも静められたキリストの奥義が秘められた御言葉を必要とするすべての人たちとつながっていることを再度認識するときです」と伝えた。
トゥヴェイト総幹事はマルコの福音書6章48節~51節の御言葉について「弟子たちは舟の中で転覆しないように本当に必死でした。私たちもそのような逆風の中におり、舟の中に海水が入り込んでいるような感覚を覚えています。そのような暗闇と恐れの中に置かれています。イエス様は弟子たちに、主の奥義を少しずつ明らかにしていかれました。この御言葉は全ての時代の弟子たちに強く関連しており、試練と励ましを与えられる御言葉です。恐れは私たちが未知のものに直面するときにしばしば生じるものです」と述べた。
トゥヴェイト総幹事は再度、エキュメニズムの象徴は「十字架がマストに掲げられた舟である」と伝え、「『十字架』がマルコの福音書で書かれたキリストの奥義のクライマックスであり、十字架の奥義をすべて理解しないままに逆境の中舟をこぐとしても、復活の十字架は、永遠に神がこの世の悪、罪と死から打ち勝たれた光として残されていることを示しています」と伝えた。
その十字架があるため、私たちが互いに赦しあい、新たな生を送ることが可能なのであり、今日に至っても神秘として残されている十字架の奥義は、私たちがまだ未知のもの、理解できていないものに取り組む力を与えてくれるものであると伝えた。十字架によって私たちが死に直面するような逆境に置かれていたとしても、神の愛が明らかにされるのであり、十字架が私たちをひとつにし、エキュメニカルな動きに属させていると説明した。
トゥヴェイト総幹事は、「エキュメニカルな舟に乗るとき、逆風を受け、現実の生活にあってとても大変であるとしても、そのようなかん難の最中でキリストに会うことができるのです。弟子たちは舟に一緒に乗り込み、未知の出来事に直面していましたが、そこにキリストが来られたのです。私たちはキリストの弟子としてのみ、一つになり得ます。私たちが相互に理解し合うことがエキュメニカルな態度であると定義するとすれば、私たちすべてが地域諸教会、エキュメニカルな家族とともに弟子として共に行動することがいかに大切かがわかります。私たちクリスチャンは、私たちすべてに与えられた賜物、懸念、ビジョン、働き、さらには恐れをも共有していくべきです。そのようにして一つになることができます」とエキュメニカルな働きの重要性について伝えた。
また来年度WCC世界総会についても触れ、「イエス様は弟子たちに一つのところに留まるのではなく、共に働き動き続けることを勧められました。イエス様の召しは孤立した中にあるのではなく、弟子として共に働き、相互に理解し合うエキュメニカルな召しとして呼び掛けられています。ですから神学的、伝統教義、地域背景の異なる他のクリスチャンと共に働いていくとき、さらなるキリストの弟子としての潜在力を発揮していくことができるようになります。来年秋には韓国釜山で第10回WCC世界総会が開催されます。共に祈り、『いのちの神よ、私たちを公正と平和に導きたまえ』のテーマが実現できる確信と勇気をもって挑んでいくことができればと思います」と述べた。
先月末インドで開催された第27回インド教会協議会(NCCI)にも出席したトゥヴェイト総幹事は、「インドでは、エキュメニカルな動きによるビジョンや関わりに啓発された多くの人々が生じていることを知りました。HIV陽性反応の出た人々が、福音を伝えられ、共に励まされ助け合いながら生きている姿を見ることができました」と述べた。
また中東域のキリスト教徒の存在の重要性について、「現代に生きる世界中すべてのクリスチャンは、中東で生活するキリスト教少数派に目を向けるべきです。私たちの信仰の根は中東域に由来しています。中東域の地域諸教会で私たちの信仰の伝統が養成されてきたのです。中東域にクリスチャンが存在しなくなれあ、世界の全ての人類に向けられている神の愛を示していくことが困難になります。さらには中東域でのクリスチャンが消滅することは、福音にあるキリスト共同体の団結力を弱めることにもつながります」と伝えた。
トゥヴェイト総幹事は、「エキュメニカルな弟子の働きはキリストの奥義を完全に理解することなく平和を実現し、奥義を知ろうとする活動のバランスを取りながら進んでいます。そのような働きを進める中にあって、私たちがキリストの奥義を完全に知る前に共に動くことができることを認識させられています。モーセは神について完全に知ろうと追求していました。モーセは神について部分的にしか知らなかったにもかかわらず、抑圧の中に置かれている民を導くことができました。ジョン・ウェスレーは正義の福音を伝えました。世の必要に応えていく福音であることがより強く認識されるようになっていきました。『世界がさらに聖められることを必要としているからこそ』聖めの働きと完全な人になることが福音にあって願われていることを伝えました」と述べ、共に荒波の中の舟に乗り込んでいるクリスチャンとして『しっかりしなさい。わたしだ。恐れることはない』と言われるイエス・キリストが来られ、共に働かれることを認識して行動していくことが大切であると伝えた。