日本福音同盟(峯野龍弘理事長=JEA)宣教委員会は11、12日の2日間、東京・代々木の国立代々木オリンピック記念青少年総合センターで宣教フォーラム「日本宣教の明日を考える」を開催。11日午後1時からの開会礼拝に続き、午後2時からは「セッション1」が行われ、「クリスチャン新聞」編集顧問の根田祥一氏と情報企画課の遠山清一氏が、統計から見える日本宣教の課題を提示した。
「クリスチャン新聞」の調査によると、全国のプロテスタント教会数は、7642(00年)から7992(06年)と、6年間で350も増加。1教会あたりの人口は、1万6431人から1万5869人へと改善した。だが、地域別に見ると、教会の増加は東京、埼玉、千葉、愛知などの大都市圏に集中しており、ほとんどの道府県は、横ばいか減少傾向にあるという。
地域的格差を最新データ(06年の1教会あたり人口)で比較してみると、教会数がもっとも多い沖縄(6566人)と、もっとも少ない佐賀(28193人)では、4.3倍もの格差があり、福音に触れるチャンスの地域的格差の拡大が明らかになった。
次に、ここ数年来の市町村合併による「教会未設置地域」の見かけ上の変化を指摘。「教会未設置地域」の割合は00年に比べて06年では減っているが、教会未設置の実態が大きく変わったのではないことをデータによって示した。
また根田氏は、近年の市町村合併によって、これまで統計上は見えにくかった教会未設置地域の実情が明らかになったことを報告した。
調査の結果、北海道赤平(人口:1万4782人)、歌志内(人口:5499人)と鹿児島県垂水市(人口:1万9437人)のほか、2万〜5万の人口を抱える18の市に教会が一つもないという深刻な実態が明らかになった。さらに、「町」も含めると、人口2万人以上の自治体で教会がないところは45もあるという。市町村合併によって新たにできた「市」は、かつての郡部を含む広い面積を持つケースが多い。町村単位でなく、その集合体としての地域で見ると、人口4万〜5万に対して教会がない「隠れ空白地帯」はもっと多く存在する。
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では、これら日本宣教に残された課題を改善するにはどうすればいいのか。根田氏は、地域の発展性が見込めない過疎地においても教会を生み出す、従来の手法を越えた知恵と戦略の可能性として2つの実例を紹介し、提言とした。
万年「教会未設置市」の一つである長崎県松浦市では、既成概念を破る教会開拓の試みがすでに始まっている。
松浦市は、60年代まで炭鉱の町として栄えたが、閉山により人口が激減。幹線鉄道からはずれた半島に位置し、地形的にも取り残されていた。しかし、70年代に火力発電所を誘致し、国内有数のエネルギー基地として盛り返した。近年は人口2万人台を推移し、現在はやや増えつつある。
国際キャンパス・クルセード(CCC)は、韓国CCCを通してクリスチャン学生らを短期宣教チームとして日本に送り、90年代初頭から日本各地の未伝地伝道を目指す日韓国際宣教プロジェクト「ニューライフ日本」を展開している。EHC(全国家庭文書伝道協会)や地域教会と協力し、教会のない地域へのトラクト配布や国際交流などを通して活動してきた。
その参加者の中から中長期で日本宣教を志願する若者たちが起こされ、03年には松浦市をモデルケースに、教会未設置市に教会を開拓する計画「マケドニア・プロジェクト」が開始した。
市内にCCC宣教チームが住み込み、韓国語教室や文化交流など、特色を生かした様々な伝道活動を展開。近隣の福岡市にある日本バプテスト連盟、日本同盟基督教団の教会や、隣接する佐賀県伊万里市の単立教会などが連携、協力している。
伝道団体であるCCCは、教会形成のリスクを気にせず人材を投入できるメリットがある。だが、将来の教会形成に不可欠である「恒久的な受け皿」をつくるためには、地域教会の協力がどうしても必要となってくる。
1教会、1教派による開拓伝道は容易ではないが、周辺地域の複数の教会が教派を越えて協力することで、そのリスクを抑えることができる。できた教会の所属をどうするか、専任牧師をどのように派遣するかなど、乗り越えなければならない課題はあるが、プロジェクトを推進するCCCのグ・ウォンジュン(具元俊)宣教師は、「1人が遣わされただけでは難しい開拓地でも、国際的・超教派的な協力で10年、20年を視野に入れて取り組んでいきたい」と語っている。韓国CCCは04年2月、福岡市に日韓の学生が合宿しながら訓練を受けられる「福岡CCC福音宣教センター」を設置し、プロジェクトの達成に向けて協力している。
根田氏は、教会過疎地問題に対する打開策のもう一つの実例として、中長期的な視点で教会を後方支援する伝道団体「B Japan」(http://www.bjapan.jp/)が提唱する「賜物ネットワーク」を紹介。そのシステムの一環には、様々な賜物を持つ牧師・伝道師を「バイブルチーム」に登録し、諸教会の求めに応じて聖書メッセンジャーや牧会カウンセラーとして派遣するという構想がある。これがうまく機能すれば、教会の地域格差の問題を打ち破る、一つの突破口になるのでは、と提言した。
最後に根田氏は、「人的・経済的リソースやプロジェクトを持ち、ネットワーキングに必要なアイデアや情報・ノウハウが蓄積されている伝道団体と、一時的なキャンペーンで終わらない教会形成へ向けた恒久的な基盤を持つ地域教会(教団教派)とが、互いのメリットと機能の違いを認め合い、協力しあうパートナーシップを生かすことが、日本宣教の課題を乗り越えていくためのカギではないか」と語った。
根田氏の講演に続き、遠山清一氏は、「クリスチャン情報ブック」(クリスチャン新聞)で蓄積されたデータから見た、日本の教会学校の現状を報告。教会学校の奉仕者育成、協力者の掘り起こしのためには実際にどうすればいいか、また夏季キャンプなどへの参加をどのように促していくか、などの具体的課題を提言した。
講演後、参加者らはグループに別れて討議。教団・教派を超え、伝道団体とも連携した協力による教会形成の実現は可能か、今後増えることが予想される無牧教会の維持・運営のためには何が必要か、また、教会の地域間格差を縮めるためのカギはどこにあるのか、などの課題について具体的な意見を交換した。