戦時中に捕虜として日本へ連行され、飢餓や病で獄死した英軍極東捕虜と遺族の心の傷を癒し、日英の和解を目指す「アガペ」(恵子ホームズ代表)の夕食レセプションが9日、東京・千代田区の如水開館であった。訪日中の元捕虜と捕虜遺族、支援者ら約90人が出席した。代表のホームズさんや前在英日本大使の折田正樹さんの姿もあった。ピアノ演奏や遺族らのスピーチが行われ、両国関係者は終始和やかな雰囲気の中で交わりのひと時を過ごした。
1992年に活動を始めたアガペは、いままでに400人以上の元英軍兵士や捕虜遺族を日本に招待し、和解の働きを続けてきた。今回は英国から18人が参加。長崎、京都、三重、東京を約10日間まわりながら、日本人家庭や戦争関連施設、戦没英兵士の墓地などを訪問した。
代表のホームズさんは三重県紀和町に生まれ、ロンドン出身の夫ポール・ホームズさんと出会ってからクリスチャンになった。その後、夫を飛行機事故で亡くし帰郷。そのとき紀和町の人々が英兵戦没者記念碑を立派に建て替え、墓地がメモリアルガーデンとして大切に管理されていることを知った。
第二次世界大戦中、紀和町の入鹿銅山では300人の英軍極東捕虜が働かされ、16人が命を落とした。犠牲者の名前が刻まれた石碑をカメラに収めながら、ホームズさんはそこで働いた捕虜や遺族を探したいと強く願うようになる。
'91年10月、ロンドンのバービカンセンターで開かれた極東捕虜協会(FEPOW)の全国大会に参加した際、参加者は日本人のホームズさんを見るや罵声を浴びせた。遺族らの憎しみをみたホームズさんは、自分が彼らの心の癒しと和解のために遣わされたことを悟ったという。
それから7年の準備期間を経て、元捕虜を連れて日本を巡回するツアー「心の癒しと和解の旅」を開始。参加者の中には、日本に対する憎しみが強く、日本人に会うことを最後まで拒絶していた人などもいた。しかし、日本での温かい歓迎を受けながら、その心が自然と癒されていったという。
元捕虜の父と一緒に参加したニール・リード Jr.さんは「今まで心を閉ざしていた父も、今回の日本訪問を通して心から日本を赦すことができた」と参加の喜びを語った。
英エリザベス女王は、'98年4月に、元捕虜の人たちとともにホームズさんをウィンザー城に招き、第四級勲功章(OBE)を贈った。
東南アジアにも使命を感じているというホームズさん。来月中旬までの日本滞在中にも台湾への訪問を予定している。今月11日には明治大学VIPクラブ、27日には金沢フィラデルフィヤ教会で講演を行う。