日本の点字聖書は、1894年横浜にあった米国聖書会社(日本聖書協会の前身)が『ヨハネ伝』を点字訳したものが最初である。これが日本で最初の点字出版物だという説もある。その後、1921年に神戸にあった英国聖書協会が『点字新約聖書改版』を、つづいて1924年に米国聖書協会が『点字旧約聖書』を発行した。旧・新約そろった聖書の発行はイギリスにつづいて世界で2番目であった。その後は日本聖書協会から刊行された『口語訳点字聖書』が1956年に全巻完成した。
新改訳聖書初版の点字聖書は長年の歳月をかけて74年に新約が、86年に旧約が日本愛盲協会の協力で完成した。点字聖書の製作は全作業が手作業で行われる。その過程はまず、2つに折った亜鉛版に点字を打ち込み原版を作る。そして打ち間違えたところを金槌でつぶし平らにしたとこに再び点字を打ち込み校正する。その後、亜鉛板の間に点字用紙を差し込みローラーでプレスして印刷し凸凹の点字が完成する。そして最後に一枚ずつ糊づけして表紙を張り製本作業を行うのである。全作業手作業で行うために、発注から完成まで約6カ月という長い期間がかかっていた。また、点字はその字の大きさが決まっており、紙面に表される点字の文字数も限られている。そのため、聖書の製作には膨大な紙数が必要となり、積み上げると高さ160〜170センチほどになるといい、扱いやすくするため点字聖書は分冊され全31〜32巻として発行されてきた。初版発行以来、黒字版は第2版が出されたが点字版はそのままできた。そのため今回はおよそ20年ぶりの新改訳点字聖書の改訂となった。なお、新共同訳聖書の点字版は1989年に発行されている。
今回の新改訳点字聖書改訂第3版は製作にパソコンを導入、印刷には点字プリンターを使うことにより、作業は約二週間と大幅に短縮された。それでも、校正は点字分かち書きとともに、句読点、各章節の位置など墨字と点字のデータとの付合せに5、6人のボランティアが6校まで行うという忍耐を要する作業である。また製本にも改良が加えられ開きやすいようにバインダー方式に変更、傷んだ頁だけでも取り替えることが可能となった。旧約がそろった全巻の完成は2005年12月になるという。今回の発行により、点字聖書の更なる頒布拡大が見込まれている。
点字聖書は1巻各100円で頒布されるが、製作には1巻約1600円、旧・新約聖書一冊文では5〜6万円の費用が必要となる。そのため、点字聖書を発行する日本聖書刊行会、日本聖書協会ではともにこの製作費用をまかなうための献金や募金を募っている。問い合わせは、日本聖書刊行会(電話:03・3291・2595、FAX:03・3233・0705)か、日本聖書協会(電話:03・3567・1986、FAX:03・3567・4436)まで。