1月下旬に「長崎の教会郡とキリスト教関連遺産」が世界遺産暫定一覧に追加されることが決まった長崎で、五島列島の新上五島町奈摩郷に、教会をイメージした民宿「やがため」が12日オープンした。
五島列島には約50の教会があり、東京を中心に全国から巡礼のために信徒が訪れたり、その豊かな自然を楽しむために観光客が頻繁に訪れる。しかし、近辺に観光施設は並ぶが宿泊施設がないという要望などから、昨年春から民宿設営の計画が持ち上がった。
民宿を始めたカトリック信徒の川口昭一さんは、教会の神父とも話しながら、教会と密接な関係にある同町をアピールしようと教会風の外観にこだわった。
民宿「やがため」の正式なオープンは12日であるが、1日から仮オープンしており、先日も25人程度のカトリック信者が五島列島の教会を巡回する際に利用していった。また全国各地の旅行会社からの問い合わせも多く、ツアーを企画するために頻繁に下見に訪れるという。
木造2階建てで面積約360平方メートル。1階には和室1部屋、シングル1部屋があり、2階にはツイン8部屋、和室2部屋で、計12部屋が用意されている。最大で26名が宿泊可能で、全室にバス・トイレが完備されている。宿から車で15分程度のところに温泉もあり、バスでの送迎も行っている。
価格は一泊朝食付きで6千円からとなっており、夕食は五島の食材をふんだんに使った料理をオーダーすることもできる。教会の写真を展示したり、五島の物産も取り扱っている観光施設「矢堅目の駅」も近く、そこで食事を取ることも可能だ。
「矢堅目の駅」は、川口さんが観光事業の一環として手がけているもう一つの施設で、50メートルくらいの長屋で塩の製造を行なっている。塩の製造で釜を使うため多くの煙突が備え付けられており、長屋に煙突という姿から「汽車」が連想されるため、この名がつけられた。
近くには、海の展望が素晴らしい「矢堅目公園」や冷水教会、国指定重要文化財で「長崎の教会郡とキリスト教関連遺産」の1つでもある青砂ケ浦天主堂がある。また、海にも近いため夏には海水浴を楽しんだり、あわびの養殖場の見学などもできる。来月25日からは1ヶ月間にわたって「蛍祭り」が開かれるため、来月の予約状況は「満員」だという。
五島では青砂ケ浦天主堂のほか、旧野首教会、頭ヶ島天主堂、江上教会、旧五輪教会堂、堂崎教会の計6つの教会が「長崎の教会郡とキリスト教関連遺産」に入っている。川口さんは、「五島の観光ツアーには教会巡りのコースが多い。人口2千人近くのこの地域に、今までに宿が1つもなかった。これからいろいろと営業しながら企画を立て、多くの客に来てもらいたい」と話している。