牧師、宣教師、ビジネスマンなどの幅広いメンバーで構成されるエリヤ会主催のシンポジウムが17日、お茶の水クリスチャン・センター(OCC、東京都千代田区)で開催され、全日本宣教祈祷運動運営委員長の三森春生牧師(イムマヌエル王子キリスト教会)の提言に続き、元カネボウ薬品会長で神木イエス・キリスト教会伝道師の三谷康人師が、「迫り来る教会の危機をチャンスに変えられるのは牧師」と題して基調講演を行った。
最近のギャラップ調査によると、キリスト教に好意的で心を開いている日本人は国民全体の6%に上るという。しかし、実際のクリスチャン人口は未だわずか1%にも満たない。さらに、教会内部では少子・高齢化が年々加速。新しくクリスチャンになる受洗者の年齢構成は、1985年には10歳代、20歳代の若者が全体の55%を占めていたのに対し、2000年にはわずか30%。牧師、伝道師などの教職者は、高齢による引退者の増加と新教職者数の減少により、毎年全体で約100名近くが減少している。(キリスト教年鑑より)
このような状況について三谷師は、「大きなギャップは、大きなチャンス」になると発想を転換。「マーケティングと革新」というビジネスの発想をこれに適用させ、宣教における画期的な発想の転換を提唱した。成果も資源も企業(ここでは教会)の「内」にあるのではなく、企業(教会)の「外」にあることをまずは認識すること、そして成果は、内部の「問題」を解決することによってではなく、「機会」(ここでは教会の外にいる99%のノンクリスチャンのニーズ)を開発することによると説いた。つまり、教会が内向き志向にばかり偏るのでなく、教会の外にいる99%のノンクリスチャンの視点に立った教会形成に特化することが教会成長において今必要であることを強調した。
また三谷師は、一時は閉園まで検討されながらも、発想の転換による抜本的な改革によって昨年、上野動物園を抜いて日本一の入園者数を記録した旭山動物園の実例を紹介しながら、今の教会が、最悪のピンチを最高のチャンスに変えることのできる自己変革の可能性を探った。
旭山動物園の入園者が増えたもっとも核心的な理由は、彼らが「訪れる入園者が楽しむ」だけでなく、「動物園にいる動物も、訪れる入園者も、ともに楽しむことができる」動物園を目指したことにあると指摘。つまり、固くて辛くてつまらないというマイナスイメージばかりの教会ではなく、教会にいるクリスチャンが聖霊によって喜び輝く信仰の姿に変わり、教会が明るく楽しくオープンなイメージに変わるとき、人々が自然と教会に集まると説いた。
さらに、教団や教派の壁による日本のキリスト教界の分散弱体化を指摘。聖書でも説かれ、ビジネスにおいてもごく基本的な戦略として知られる「弱ければ力を結集する」という基本方針を、諸教会が明確に打ち立てることで宣教が活性化されると提言した。
最後に三谷師は「全世界に行って、すべての造られたものに福音を宣べ伝えなさい」(マルコ16:15)という主イエスの御言葉と、「福音のためなら、わたしはどんなことでもします」(?コリント9:23)という使徒パウロの告白を聖書から引用し、教会の牧師が、宣教に対する使命感や現状に対する危機感を明確に持つこと、またノンクリスチャンの視点に立つことで内向きから外向きへの自己変革を行い、教団や教派を超えた超教派の一致を成すことが不可欠であることを訴えた。