全米で今最も影響力のある教会、ウィロークリーク・コミュニティー教会の牧会理念を日本に紹介するウィロークリーク・ネットワーク・ジャパン(以下、WCJ)は8日、講師にゲアリー・シュアムライン師(ウィロークリーク・コミュニティー教会アソシエーション副代表)を招き、本郷台キリスト教会(主任:池田博牧師・横浜市栄区)でセミナーを開催した。各教会、教団の牧師や信徒リーダーを中心に147人が参加。シュアムライン師は「『地域に根ざした教会』を目指して」をテーマに、同教会の始まりから今に至った経緯や、著しい成長を実現させた同教会の宣教・教育プログラムについて証しした。
ウィロークリーク・コミュニティー教会はアメリカシカゴ郊外に存在するメガチャーチ。1971年にビル・ハイベルズ牧師(当時21歳)が、使徒の働き2章40節から46節の聖句を同教会のビジョンとして始めた。以来創立から今日に至るまで、求道者向け礼拝、セルグループ、霊の賜物、リーダーシップサミットなどの宣教・教育プログラムを実践し、「聖書的に機能する教会」の形成を目指して日々成長し続けている。
シュアムライン師によると、ウィロークリーク・コミュニティー教会の創立者であるハイベルズ師は、子どもの頃に友人を主日礼拝に誘った際に「そんなところは普通の人がいくところではない」と一蹴され、ショックを受けたという。それを機に、同師は今までにない教会を建てようと決意し、使徒の働き2章に基づいた理想的な教会の設立を目指した。創立の際にハイベルズ師は、「私の時間を5年間お捧げます。何でもします。このビジョンに基づいた教会を5年間で建てることが出来るようにしてください」と、ひざまずいて祈ったという。
その後ハイベルズ師は、まず20代前半の友人たちから伝道し始めた。そうして初めての教会が映画館の中に建てられた。次は教会員を増やすことを目的とし、同師を中心とした教会のメンバーたちは家を一軒一軒まわり、「教会へ行っていますか?」「教会へ行きたくない理由は何ですか?」と熱心に声をかけながら伝道した。しかし、向かう先々の人々から、「神様はどのように結婚生活を助けてくれるのか」、「教会の主日礼拝が毎回同じでつまらない」、「教会が退屈だ」、「教会はお金を取ってばっかりだ」などと批判され、絶望感を抱いたこともあったという。「聖書が自分の生活にどのように関わり、介入してくるのかを感じることができない人が多かった」とハイベルズ師は話し、そのような人々を見つめながら、「一番大切なことは、現実の生活に関連付けられて福音が述べ伝えられることである」と語ったと、シュアムライン師は証した。
その後もあきらめずに地道な伝道活動を続けた結果、教会員の数は数千人規模に膨らんだ。こうしてウィロークリーク・コミュニティー教会は急激な成長を遂げていった。しかし、あるとき成長率が停滞していることに気付いたという。原因は時間の経過とともに教会員の平均年齢が高くなっていったことだ。創立当初はハイベルズ師をはじめ、友人たちも含めて年齢は20代前半であったが、2000年代に入ると40代後半から50代前半に近づいていた。そのため教会に活気が失われ、伝道の勢いも次第に弱くなってしまったという。
このような現状に打開の道を開き、教会の更なる成長を目指すため、ウィロークリーク・コミュニティー教会は宣教戦略を抜本的に改善した。そのときにハイベルズ師が打ち出した新たな戦略とは、つまり、高齢者を中心とした伝道に偏向していた宣教スタイルを止め、設立当初のように若者を対象にした伝道スタイルに戻すというものだった。礼拝の賛美スタイル、水曜の聖書勉強会、日曜学校の教師陣の入れ替えなど、改善策は多岐にわたった。ハイベルズ師は、「変わらなければ生き残れない」を合言葉に教会内の反対者を説得し、若い世代をターゲットに伝道を行った。このために、既存の教会員の中には離れていく者もいたが、新しい訪問者の数は離別者を上回る勢いで急激に増加したという。
さらに同師は、教会の成長度に合わせて、求道者向け礼拝、セルグループ、霊の賜物、リーダーシップサミットなど、常に新しいアプローチに取り組んできた。その結果、ウィロークリーク・コミュニティー教会は、現在アメリカで最も影響力があるメガチャーチとして注目されるに至った。教会員は数万人規模に膨らんだ。
さらにシュアムライン師は、ウィロークリーク・コミュニティー教会の今後の課題について、「地域に根ざした教会の形成を目指し、今後は周囲の環境の変化に敏感に配慮していくことが必要だ」と訴えた。例として、原油価格の高騰に伴いガソリン価格が上がれば、遠くに住む教会員は教会に来なくなること、白人教会員の割合が減少し、ヒスパニックやアジア系の教会員が増えてきたことなどをあげ、このような地域的・社会的な情勢の変化に柔軟に対応していく必要があるとシュアムライン師は語った。
また、ウィロークリーク・コミュニティー教会は自教会の成長を目指すだけではなく、キリストの体である個々の教会の発展を願い、他教会の成長支援活動も行っている。具体的には、同教会が実践した宣教・教育プログラムを伝える教材、トレーニング、ビジョン、カンファレンスを教団・教派の枠を超えて45カ国、90の教派に提供している。
08年8月には米ウィロークリーク・コミュニティー教会でサミットが行われる予定。また10月、11月には教会リーダーの育成を目指してリーダーサミットが世界各国で行われる予定だ。米国で行われるサミットには、第39代米大統領のジミー・カーター氏を講師として招く計画があり、アジアで行われるサミットでも著名な講師を招く予定。日本でも講師を検討中だという。
WCJは、ウィロークリーク・コミュニティー教会の牧会理念を紹介する日本での働きの一端を担い、日本語に訳された教材の提供、各教会におけるトレーニングの補助、日本でのカンファレンスの開催、また現地カンファレンスへのツアーの企画などを手がけている。本郷台キリスト教会主任牧師の池田博師が顧問、SDA柏キリスト教会主任牧師の宮本安喜師が代表をそれぞれ務めている。