社会福祉法人岡山博愛会(岡山市)は、運営する同病院の老朽化対策として、本院(同市門田屋敷)と分院(同市御幸町)を統合して新築移転することを決めた。移転完了は来年5月の予定で、新施設の名称は「岡山博愛会老人保健施設『みくに』」。介護療養病床が2012年3月末で廃止されるため、移転に併せて同病床を介護老人保健施設に転換し、同施設の4階にその機能が置かれる。病院は1〜3階部分となる。
同会は、岡山四聖人の一人である米国人女性宣教師アリス・ペティ・アダムス(1866〜1937)による日本で最初のセツルメント(地域改善事業)によって始まった。当時25歳であったアダムス宣教師は1891年に来日し、同年12月には日本学校を開始、教育の機会を持たない子ども達のために、私立の小学校、幼稚園、保育園に加え、成人のための和裁や洋裁学校まで設置した。
新施設の形態は、利用者一人一人の尊厳を保ちながら、可能な限り自宅と同様の環境で日常生活を営むことができる「ユニットケア」が採用されている。10〜11人分の居室用個室と共同生活室が1ユニットとなっており、それぞれが自分の空間と共同の空間を持ちながらともに生活できるようになっている。
同会では、各利用者がその能力に応じて役割を持ち、相互に社会的関係を築いて自立した日常生活を送ることができるよう、リハビリテーションや看護、介護、その他日常的に必要とされる医療、日常生活上の支援を行う。そうすることで、利用者の居宅生活復帰を目指していくことを方針としている。
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セツルメント(settlement)
宗教家や社会福祉事業者など専門的な知識を持つ者が、スラム街や工業街などの貧困地域に住み込み、地域住民の生活を援助する活動。また、それを目的とした施設(隣保館=りんぽかん)のこと。1870年代に経済学者で牧師でもあった英国人のアーノルド・トインビーらによって同国で始まった。米国で同活動を先駆的に行ったジェーン・アダムズは1931年にノーベル平和賞を受賞。アリス・ペティ・アダムスも、藍綬褒章(1923年)、勲六等瑞宝章(1936年)を受賞している。
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