広島市内の10大学が、カルト集団による学生の被害を防ぐことを目的に、情報交換など連携強化に向けた活動を開始した。
地元の中国新聞によれば、夏季休暇時期に合わせて今年7月下旬、同市東区の広島女学院大学で、同大と同市内9大学の学生課担当者が集まり「カルト情報交換会」を初めて開催した。学内でサークルを装った勧誘活動があることや、合宿に誘って洗脳する手口が用いられていることなど、各大学で横行しているカルト集団による学生勧誘の情報を報告し合ったという。
大学キャンパス内でのカルト対策を巡っては、今年春に全国約50大学の教員やカルト問題を研究する教授らが、所属大学の枠を超えて新しいネットワークを立ち上げるなどの動きを見せており、すでに今月までに参加大学は70大学に拡大している。
国内のカルト問題に取り組む日本脱カルト協会(=JSCPR、楠山泰道代表理事)では、キャンパス内でのカルト被害にあわないためのアドバイスとして、名前を詐称するサークルを警戒すること、もしおかしいと思ったらはっきり断ること、誰かに相談すること、情報規制を感じたらすぐに逃げることなどを呼びかけている。
しかし、カルト対策が叫ばれる一方、カルトについての線引きや信教の自由との兼ね合いなどで課題を指摘する声もある。
北海道大学(同札幌市)では6月に行われた「北大祭」で、過去にカルト系宗教団体から強引な勧誘を受けたとして来場者からの苦情があったため、同祭内での政治と宗教の活動を禁止する自主規制を決めた。しかし、学内から反対の声があり、署名活動なども起きたため、同祭終了後の7月には、規則を宗教に限らず、違法・強引な勧誘、思想の自由を妨げる強要行為を禁止するという内容に改正した。
同祭を主催する全学実行委員の坂谷駿委員長は、「カルト宗教を規制しようと行き過ぎてしまった結果だった。言論の自由と、祭りの安全を守っていきたい」(北海道新聞)などと改正について説明している。
大学生をターゲットとしたカルト団体としては「世界基督教統一神霊協会(統一協会)」や「摂理(JMS)」などが特に知られている。統一協会は活動当初から学生中心の「原理研究会」を組織して勧誘を行っており、現在でも英名の略称である「CARP」(カープ)の名を使うなどして活動を行っている。
教祖が多数の女性に対して性的暴行を加えた「摂理」(鄭明析(チョン・ミョンソク)総裁=今年4月、韓国で懲役10年の実刑確定)も国内では主に関東、関西、九州の各大学で活動を展開していたとされている。「摂理」の被害が深刻であった千葉大学(同県同市)ではカルト問題専門の相談窓口を開設し、昨年からは悪質な勧誘団体の防止対策を専門とする委員会の立ち上げにも乗り出している。
また、大阪大学(同府吹田市)では3年前から新入生全員を対象にカルト対策の内容を盛り込んだ必修講義(90分)を新設。学生からは、講義を通して過去にカルト団体からの勧誘を受けていたことを自覚するようになったなどの声があり、一定の効果を見せているようだ。