「長崎の鐘」として知られる浦上天主堂(長崎市)の「アンゼラスの鐘」のレプリカを、赤十字創設者で第1回ノーベル平和賞受賞者であるアンリ・デュナン氏を記念するスイスの博物館に贈る準備が行われている。博物館側は「長崎で被災した鐘は平和の象徴。赤十字精神のシンボルにしたい」などと語っている。朝日新聞が伝えた。
アンゼラスの鐘は戦前、「東洋一」と言われた浦上天主堂の双塔にかけられていたが、1945年8月9日、長崎に落とされた原爆によって天主堂の破壊とともに鐘も瓦礫の中に埋もれてしまった。同年12月にその一つが掘り出されて以来、長崎を象徴する「平和の鐘」として、その音色を響かせてきた。
戦後60周年を迎えた05年には、記念して長編アニメ映画「NAGASAKI・1945 〜アンゼラスの鐘〜」(虫プロダクション・有原誠治監督)が制作された。作品は、アンゼラスの鐘、元はカトリックの神学校であった浦上第一病院、そしてそこに派遣された医師・秋月辰一郎の3つの接点を描くもので、戦争の悲惨さを訴えると共に、それを乗り越えて再びアンゼラスの鐘が長崎の空に響き渡ることへの「希望」を伝えている。英語版もあり、昨年は国連でも上映された。
同紙によれば、2010年はデュナン氏の没後100年にあたり、これを記念しようと同博物館が「平和の象徴」を探していたという。鐘のレプリカを贈る計画をしているのは長崎大学医学部の有志。同大学院の山下俊一教授がジュネーブの世界保健機関(WHO)へ赴任していた際に、アンゼラスの鐘のことを博物館に紹介したのがきっかけとなった。
浦上天主堂は1959年以降、カトリック教会の長崎大司教区司教座聖堂(カテドラル)として、長崎教区の中心的役割を果たしている。爆心地から至近距離にあったため、被爆時にはほぼ原形とどめぬまでに破壊された。その外壁の一部は、近隣の平和公園に移設されて保存されている。また、アンゼラスの鐘のもう一方は、原爆によって浦上天主堂の北約30メートルの地点にまで吹き飛ばされたが、現在も被爆時のままで保存されている。