イラク北部の最大都市モスルで、イスラム教スンニ派過激派によるキリスト教徒への襲撃事件が相次ぎ、地元のニーナワー県知事は11日、ここ1週間でキリスト教徒約3000人がモスルから避難したことを明らかにした。
AP通信によると、11日だけで少なくともキリスト教徒の家屋3棟が爆破。CNNは、これまでに死者13人を出したと伝えている。一方、ニーナワー県知事はAP通信に対し、国際テロ組織であるアルカイダが一連の襲撃に背後で関係していると指摘した。
スンニ派過激派によるキリスト教徒に対する一連の襲撃についてCNNは、来年1月末の同州地方選で議席拡大を目指して行ったキリスト教徒の大規模デモが発端となったとみられると伝えている。現在、キリスト教徒らはほかの町の修道院や教会に避難しているが、避難先の家屋が爆破されるなどの事件も発生している。
CNNによれば、モスル市内のキリスト教徒居住地区では先週、非イスラム教徒の人頭税(ジズヤ)納税か死かを迫る文書が配布された。数日後には過激派が市内各地に検問所を設置、車を止めて身分証明書の提示を求め、キリスト教徒の名前を持つ者などを標的にするようになったという。
イラクのキリスト教徒は人口の約3%と言われる少数派で、03年のイラク戦争によってイラク国内のキリスト教徒は避難を強いられ、現在は戦争前の半数にまで減少しているという。また、イラクに在住する多くのキリスト教徒は政治的、軍事的な権力を持たないため、殺害や強制移住などによって根絶されてしまうことも危惧されている。
今年2月にはモスルで武装グループが警護ら3人を殺害して、カルデア典礼教会のパウロス・ファライ・ラホ大司教を誘拐、その後殺害した。この事件では殺人に関与した罪で、国際テロ組織アルカイダの指導者で指名手配されていたアーメド・アリ・アーメド被告に対して死刑判決が下された。