日本から見たイスラムと韓国教会から見たイスラム
日本はイスラムを研究する専門家が韓国に比べてとても多い。韓国でイスラムを紹介する人々は、国内のイスラム教徒やイスラムを肯定的に書く。日本のイスラム専門家は、(1)批判的、(2)中立的、(3)肯定的な立場のいずれかでイスラムを紹介する。しかし、キリスト教的西欧とイスラムは衝突するという見解には概して批判的だ。「共存」を強調する。この点について日本の若手イスラム専門家、池内恵がとても鋭く指摘している。「日本のイスラーム研究者の間では、イスラーム思想やイスラーム世界を過度に理想化する通念が支配的になり、それがマスメディアの報道にも徐々に影響を与えはじめている。それにより、『イスラーム的共存』や『寛容』の存在とその優越性は、具体的事例が示されないまま、ほとんど自明のものとされている。」(『アラブ政治の今を読む』197‐208頁参照)。
池内は、相手を敵視することも問題だが、同時に相手をすぎるほど理想化することも解決策ではないと言う。その点で日本の多くのイスラム研究者が提示する対応策は適切でないと指摘する。日本のイスラム研究者は当為性や理想化を根拠に文明共存を主張する傾向が強い。だが、そこでの議論ではしばしばイスラム教徒の絶対視するコーランが全く無視されている。池内がテロという国際的現実とコーランを基礎に、現実を正確に分析したことをありがたく思う。池内は、コーランには異教徒の討伐を命ずる章句が多いと主張する。コーラン第2章193節と第9章5節は代表的だ。この2つの本文は、「争いなさい」「殺しなさい」と命ずる。韓国教会は現在、キリスト教とイスラムの2つの宣教的宗教が大きく衝突することを憂慮している。その理由は、韓国で展開されるイスラムの攻撃的宣教活動のためだ。数年前、KCIAの部長はクリスチャンだった。彼は情報機関責任者として韓国のイスラムの状況を調査した。彼はイスラムを危険な宗教と見ている。彼の調査によると、当時韓国国内での韓国人イスラム教徒は4万人、外国人イスラム教徒は9万人、モスクとカルチャーセンターがあわせて50箇所あったと言う。
韓国政府は現在、露骨にイスラム国家に対して宣教活動を慎むよう慫慂(しょうよう)している。2つの宣教的宗教の衝突を避けようとの努力だ。同時に中東国家を刺激しないよう配慮している。KCIAは先日、イスラム宣教団体の責任者らと会談を持った。テロにあらかじめよく備えようということも議論された。
韓国教会はこれまで、イスラムの宣教戦略について多く議論した。宣教戦略を論ずる宣教団体や関係者は、イスラムの恐ろしい面には言及せず、伝道対象としてイスラム教徒を愛すべきことを強調した。しかし今、イスラムに対する論議や研究の見方は変わっている。イスラムを恐ろしい宗教、すなわちイスラム宗教の社会的な逆機能を指摘している。イスラムが韓国社会において勢力を増せば、韓国社会はそれを憂慮する。それはなぜか。(次回に続く)
【全浩鎭 (ジョン・ホジン)】 1940年、大阪生まれ。韓国・高神大学、同大学院卒業、米国・ウェストミンスター神学校神学修士課程修了、米国・フラー神学大学宣教学博士課程修了、英国国立ウェールズ大学哲学博士課程修了。その後、高神大学学長、平澤大学学長、亜細亜連合神学大学大学院院長、トーチ・トリニティー神学大学院教授などを歴任。現在は、イスラエル及びイスラムネットワーク会長、韓半島国際大学教授。著書に、「宣教学」(85年)、「宗教多元主義と他宗教宣教戦略」(92年)、「アジア・キリスト教とミッション」(95年)、「人種葛藤時代と未伝道種族ミッション」(00年)、「イスラム―宗教家イデオロギーか」(02年)、「文明衝突時代のミッション」(03年)、「転換点に立つ中東とイスラム」(05年)(いずれも韓国語)などがある。