明治学院大(東京都港区白金台)のキリスト教研究所・「宣教師研究」プロジェクトが主催する公開研究会が15日、同研究所で開催された。同研究所の協力研究員である徐正敏教授(ソ・ジョンミン、延世大)、A.H.アイオン教授(カナダ王立防衛大)の2人が各研究を発表。約20人が参加した。
徐教授は、「日本キリスト教の韓国認識」として、特に1910〜45年における日本人キリスト者が持っていた韓国に対する認識が、当時日本で持たれていた一般的な認識と異なるかを研究した成果を発表。アイオン教授は、「キリスト教の伝道本部と帝国主義」として、西欧から東アジアへ派遣された宣教師の事例研究を発表した。
韓国キリスト教会史を専門とする徐教授は、日韓併合、三・一独立運動、神社参拝問題など当時起こった重要な出来事を中心に分析。キリスト教関係の雑誌を中心に、海老名弾正や内村鑑三、渡瀬常吉、吉野作造ら、キリスト者の個人的見解や認識を調査した。結論として徐氏は、三一独立運動における朝鮮総督府の弾圧など、人道的問題については日本人キリスト者が他と比べても強く反対しているとした一方、全体として「日本社会の多数の意見と同一な立場を持つ」との考えを示した。
研究発表後の意見交換の時間では、三・一独立運動における韓国キリスト者の果たした意義や、運動と韓国の民族主義的な結びつき、また政教分離や反宣教師運動など様々な視点から意見・質問が出された。
「宣教師研究」プロジェクトの責任者渡辺祐子准教授(教養教育センター)は、国家と宗教、日本におけるナショナリズムとキリスト教の問題を考える上で有意義な研究会であったと感想を語った。
同研究所では「宣教師研究」プロジェクトの他、キリスト教主義教育研究、賀川豊彦研究、明治学院卒業生献身者調査など現在9つのプロジェクトが研究活動を行っている。日本のキリスト教主義大学の中で最も長い歴史を持つ同大のキリスト教研究の場として、1966年以来40年以上にわたって活動。公開研究会の他、公開のシンポジウム、講演会も毎年行っており、今月28日には「邂逅忌」世話人らとの共催で、キリスト教作家・椎名麒三を追悼する公開講演会・第35回邂逅忌を開催する。