現在私たちがよく耳にするポピュラーな賛美は、17〜18世紀の英国から始まったと言われている。それが19世紀には新大陸へと渡り、それ以来米国は現代のクリスチャンミュージックの先進国となった。
21世紀となった今、世界の賛美の流れは大きく三つに分けられる。一番目は約300年前から歌われている伝統的な賛美を主体とした英国賛美、二番目はブラックゴスペルに代表される熱情の米国賛美、そして三番目はヒルソングによって知れ渡った「第3の流れ」と言われているオーストラリア賛美である。ヒルソングの賛美は1990年中盤から急激に全世界の教会へと広がり、今となってはヒルソングの存在は現代ワーシップになくてはならないものとなった。
では、もともと宗教と結びついて土着傾向にあった賛美に対して、ヒルソングが追及している「賛美のグローバル化」という精神は、一体どこから生まれたのか。
それは1968年ニュージーランドのスクリプチャー・イン・ソング・レコードに由来する。スクリプチャー・イン・ソング・レコードとは、ニュージーランド出身の夫婦で活躍するワーシップリーダーであるデービッド・ガロットとその妻デール・ガロットが設立したクリスチャン向けの音楽出版社。当初は楽譜出版のみを行っていた。
彼らは、「Scripture in Song」の名の通り、「聖書の御言葉を歌にするとき驚くべき能力が現れる」という言葉をスローガンに掲げて、ニュージーランド全域、オーストラリア、太平洋の島国に楽譜出版を通して賛美を伝え始めた。彼らのスローガンは多くのCCM奉仕者に大きな影響力を与えその勢いは全世界へと広がり、遂には「スクリプチャー・ソング運動」という一大ムーブメントを引き起こした。
1970年代中盤からは自主アルバム制作を始め、「I will rejoys」、「Victory Song」、「Be exalted, O God」など、スクリプチャー・イン・ソング・レコードからリリースされた珠玉の楽曲が各々の教会で歌われ始めた。さらに、スクリプチャー・イン・ソング・レコードはワーシップや賛美リードを教育する奉仕活動にも着手し始める。そのような彼らの運動に影響されて、ヒルソングチャーチやカルバリーチャペルなど賛美を主体とする教会スタイルや、マラナタミュージックというアメリカ最初のクリスチャン・ミュージック・レコード会社が誕生した。
90年代中盤、ホザナミュージックで有名なインティグリティ・ミュージックに売却されてスクリプチャー・イン・ソング・レコードはなくなってしまったが、デービッド・ガロットは今もなお世界を巡回しながら礼拝と賛美についてのセミナーを開催するなど、「歌う御言葉」の能力を世に伝えている。(BreatheCast)