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日本聖公会京都教区主教に辞職勧告 高地敬主教インタビュー(2)

2016年8月26日19時02分 記者 : 土門稔 印刷
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Q. 京都教区ホームページで京都事件についての経過報告などが掲載されていますが、2009年までの経緯で止まってしまっていて、その後更新されていません。昨年の「謝罪」や「謝罪に添えて」という文書も全く掲載されていませんが、それはなぜでしょうか。

何がややこしいかというと、代理人との交渉の中などの内容について、加害者、被害者など関係者の名前を伏せ字にするか、誰をイニシャルにするか、難しい問題があるわけです。ただそれが直接的な理由ではなく、単に忘れているだけかもしれません。私自身もそちらに目が向いていなかったもので。常置委員会でも、公表されている文書について伏字にするかについての基本方針は繰り返し話し合ってはいるのですが。プライバシーの問題もありますので。

Q. 今後の再発防止制度などを構築する上で、過去にどのような性的虐待事件があったという事実を調べるには、関係者の方の書かれているホームページはほかにもありますが、日本聖公会京都教区として公式な調査や見解を表明する必要があるわけですね。このような事件があり、裁判になり、その後の経過がどうなったかについて。それが2009年で止まっていて昨年の公式な「謝罪」文書も掲載されていないというのは、信徒の方や世間が疑問を持つのではないでしょうか。そのご理由をはっきりと伺いたいのですが。

あまりはっきりとした理由はないのです。2009年の頃は、審判廷の申し立てがあって真っ最中の年で、その対応で精いっぱいでした。その後もさまざまな状況があり、それで忙しく、そこまで手が回っていないというのが正直なところです。積極的に隠しているというわけではありません。その点については今度の常置委員会で言っておきます。

Q. 今後更新されるご予定はあるのでしょうか。

今のところ具体的にはないのですが、2009年以降のことをどこでもまとめていないので、当然まとめていかなければならないと思います。

Q. 聖公会京都教区が組織として被害者の方に謝罪するというのは、被害者の方に対してももちろん、信徒の方や世間一般の目に対して、あるいはメディアに対してもきちんと説明するということなので、聖公会のホームページのどこを見れば、過去こういう事件があり、その後の経緯がこうですというのがきちんと記述されている必要があり、それはとても重要なことだと思うのですが、今のところそのご予定が具体的にないということですか。

はい、早急に何とかしたいと思います。

Q. 昨年5月、被害者の方への「謝罪」「謝罪に添えて」(全文はこちら)という文書が発表され、「聖公会新聞」や京都教区報「つのぶえ」や「キリスト新聞」にも掲載されましたが、これについてはどう考えていらっしゃいますか。

一部疑問に思うところはありますが、おわびしたいという気持ちは今後も続けて表明していかねばならないと思っています。

私は2003年に教区主教を武藤前主教から引き継いで就任したときに、「京都事件」についての引き継ぎは全くありませんでした。退職する前にこの教区事務所に呼ばれましたが、その場に原田司祭も古賀司祭も同席していました。しかし、裁判に関する情報の引き継ぎは一切ありませんでした。

今も武藤主教に聞くと、具体的なことは(当時)一切聞いていないと一貫しています。しかし、常置委員会は、その経緯を私も含めて「引き継ぎを受けていたにもかかわらず」「隠蔽(いんぺい)した」と判断したということです。

ただそれを問題視するよりも、謝罪に向けて前に進みたいというのが正直な気持ちです。

Q. 昨年5月に、被害者の方への「謝罪」「謝罪に添えて」という文書は、教区主教ではなく常置委員の名で公表されていますが、これはなぜなのでしょうか。

初めは教区主教と教区常置委員会の連名で出す予定でしたが、最後の段階で代理人の鎌田司祭から「高地主教の謝罪は受け入れられない。名前を外せ」という通告があり、私の名前は外して常置委員の名で公表した。それだけなんです。

Q. それはなぜそうなったのでしょうか。

当然連名で出す予定でしたが、土壇場でそうなったということです。「高地」の名では謝罪は受け入れられない、ということです。それ以上聞かないでください。私にも分かりませんから。

Q. それは被害者の方やお父様の意志としてということですか。

そうは聞いていません。代理人の方の主張の訴えとしてです。お父様の意志かは分かりません。

Q. 「謝罪」と「謝罪に添えて」は被害者の女性にも送られたのですか。

はい。そして昨年5月に「謝罪」文書を公表後、6月に被害者のAさんご自身から1ページ半ほどのお手紙をいただきました。そして去年の10月に京都教区の信徒代議員が集まった場で、一部をご紹介させていただきました。

内容は、「京都教区がここまでやってくれた。涙ながらに読んでいる」ということと、「原田を京都教区はクビにしたが、それはとかげの尻尾切りだったのではないかと思う。原田がかわいそうだと思う」という内容が書かれていました。直接的な加害者は原田なのですが・・・。

ご自身が書かれたと思うのですが、2006年にAさんとお会いした当時、原田の名前は一切口にすることもできないでいらっしゃった。しかし、今回のお手紙には「原田」という名前が何回か出てきました。よく回復されたなぁと思いました。そして、二次加害というのは本当に大きなことなのだと感じさせられました。

そして「とかげの尻尾切り」というのは教区への批判ですから、真摯(しんし)に受け止めないといけないと思っています。

Q. 被害に遭った方は4人ということですが、それ以外にも被害に遭った方がいた可能性はないのですか。

判決が確定後、2006年8月に私が「事実無根である」というコメントをしてしまったのちに、Bさんという別の女性が「私も被害者です」として、近しい牧師経由で訴えてこられました。そして別のCさんという被害者の方がいたことが分かりました。その後、ホームページを見て2007年に「私も被害者です」と訴えてきている方がいらっしゃいました。

そこで原田司祭本人に直接会いに行き、目の前で問いただしたところ、Aさんとほかの3人の方の4人に性的な行為を行っていたことをその場で認めました。

Q. 教区で把握しているのはその4人の方で全てということですか。

もう少しいるかもしれません。あとは噂(うわさ)などで特定できません。絶対に他人に言われては困る、家族や両親に言われても困るというお気持ちの方もいらっしゃいます。私自身が把握しているのは5人です。

Q. カトリックの聖職者の性的虐待をテーマにして今年公開された「スポットライト」という映画にもありましたが、被害者の方はなかなか声を上げられない。裁判になった被害者の方も全く別の性的虐待事件のニュースを見て、初めて自分の被害を自覚されたということです。そして、このような事件では多くの表に出なかった累犯があったことが報告されています。ほかにも被害があったのかなどについて、教区としてどの程度きちんと確認されたのですか。

4人目の方が申し出られた際に、原田司祭のところに行って「ほかにはなかったのか」ということは聞きました。ただ長い信徒さんはこの事件をご存じですし、当時のその年代(1980年代)の女性信徒さんは、原田という人は要注意だとささやかれていたという状況があったと後から聞きました。また、被害を受けていなくても、被害を受けそうになって拒絶した方もいたということです。現在特定できるのは4人の方ですが、そのほかにも数人いたのではないかと思っています。

Q. ただその4人以外で、被害に遭った方がいなかったかということは、とても重要なことだと思います。『スポットライト』によると、声を上げられない、あるいは自殺した方もいた、一生トラウマとして引きずっていらっしゃる方もいるということが書かれていました。聖職者がどの程度被害を及ぼしていたかをきちんと検証することはとても重要なことだと思いますが、その2007年に、ご自身が原田司祭のところに行って確認されたのが最後ということでよろしいですか。

そうですね・・・。ただその際も原田司祭本人が、できるだけ自分の罪は小さく、というような態度でした。自分の罪深さを分かっているような様子でもありませんでしたし・・・。

Q. それでももし、今後さらに、新たにほかの被害に遭っていた方が申し出てきた場合、教区がきちんと調査していなかったということで大きな問題になるのではないかという危険性があると思うのですが・・・。

そうですね。ただこれ以上誰に加害を行ったのかということをどうやって確認するかというのは、非常に難しいというのが現実です。そして原田司祭本人も代理人を立ててしまっていますし・・・。

Q. 今後、どういう方向で京都教区と主教として進めていかれるのですか。

被害者のお父様は代理人の鎌田司祭を信頼していらっしゃいます。常置委員会も言っていますが、京都教区としては、鎌田司祭を代理人として、被害者のAさんとお父様に向けて謝罪をお伝えしていくということに決めています。あらゆる方策を通して、被害者の方に届く謝罪をしなければいけないと思っています。それを地道に続けていきたいと思っています。

Q. 現在、常置委員会については外部オブザーバーの方も参加されていると伺いました。これはどのような制度でしょうか。

第三者の意見を聞かないといけないと常置委員会が判断して、教区会で2014年11月、常置委員会に2年間外部オブザーバーを置くことにしたということです。聖公会の信徒ではない弁護士の方、スクールカウンセラーの方、人権活動をしている方の3人です。常置委員会の議事録を毎月送って、アドバイザー的な位置づけとして意見をいただいています。ただ外部アドバイザーの方の意見への、教区の反発が大きいのも現状です。

Q. 昨年の「謝罪」(全文はこちら)には、被害者のAさんの「私と同じ苦しみを子どもたちに与えたくない、何とかしたいと思った私が、さらに傷つけられ苦しめられなければいけなかったのでしょうか」「教会の方々へお願いがあります。自分たちの立場を守ることより、苦しんでいる人に手をさしのべてください」という言葉が引用されていますが、どうお感じになっていらっしゃいますか。

被害者の方を傷つけてきた張本人が私自身であったという認識自体が薄かったということが、自分自身の中で問題だと思っています。何かの形で区切りがついたとしても、ずっとおわびし続けていかなければならないということを思っています。高地だけでなく、聖職も信徒も謝罪するべきだと言われますが、やはり自分自身がしてきたことが一番罪深いと思います。

Q. ご自身の進退についてはどう思われていますか。はっきりとしたお言葉で言っていただければと思います。

2005年の最高裁判決確定後、「事実無根」とコメントしたのち、すぐに別の被害者のBさんが訴え出てこられました。それを聞いて自分が全く間違えてしまっていたし、ひどいことをしてしまったと自覚しました。そのような状況を何とかしてからと思っていました。今からすると言い訳になってしまいますが・・・。

現時点では、今はまだ京都教区に混乱が続いています。そして真の謝罪への道筋がはっきりと見えているわけではありません。そこを明らかにした上で、自分の進退を考えていきたいと思っています。今はとにかく被害者の女性に届く謝罪への道を探っていきたいと思っています。

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