アビガイルのところに、一人の若者がやって来て、夫ナバルがダビデの使いの者にした横暴な振る舞いと、ダビデが報復の備えをしていることを告げました。若者はなぜ、アビガイルの元に来たのでしょうか。アビガイルが日頃から何事につけても、冷静沈着に判断し行動を取ることを、若者は見ていたからです。(1サムエル25:14)
そこで、アビガエルは「急いで」さまざまな品の用意を命じ、若者を立てて出発しました。これは、彼女の優れた決断力と実行力、そして、彼女の人と物に対する優れた管理能力を表しています。(1サムエル25:18、19)
いかがでしょうか。今、冷蔵庫に何があるでしょうか。いざという時のためにお金など備えているでしょうか。いつどなたにお世話になるか、なったか分からないものです。全ての人と平和を保つ心がけをしていらっしゃいますか。
アビガイルは、自分はダビデのはしため、女奴隷であると言いました。卑下して言ったのではありません。「主のはしため」であることを誇りとしている者は、「人に仕えるしもべ」となることも辞さないからです。「主のはしため」は、人に隷属する者ではなく、生き方の確かな指針を持っている者です。
「このはしための私は、ご主人さまがお遣わしになった若者たちを見ませんでした」(1サムエル25:25)
アビガイルは、見ていたならば、頑迷な夫であってもああはさせなかったと言外に言っています。説得力とは、上から押さえつける力ではなく、毅然(きぜん)とした心の姿勢です。また、アビガイルはダビデに尊敬の念を持ち、ダビデにとって益となることを心から願いました(1サムエル25:28~31)。ですから、相手を深くおもんばかることもまた、説得力の重要な要素といえましょう。(続く)
■ 賢い女、賢い妻:(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)
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前田基子(まえた・もとこ)
イエス・キリスト緑の牧場教会(東京)で救われ、玉野聖約基督教会(岡山)から献身。生駒聖書学院卒。生駒聖書学院副院長。エリムキリスト教会牧師。ABCラジオ放送「希望の声」・テレホンメッセージ「希望の声」(074・373・3740:ゼロナシ・ミナサン・ミナヨレ)牧師。