第3回「マイノリティ問題と宣教」国際会議で実行委員長を務めた在日大韓基督教会総会長の金性済牧師は、11月19日と20日の朝、「敵意を超える歓待とシャローム―寄留者アブラハムとバビロニア捕囚に対するエレミヤ、そしてイエスの道―」と題する聖書研究で講演を行った。
その中で金牧師は、I.私たちのテーマとしての寄留者(ゲール)・敵意・歓待、Ⅱ.旧約聖書における寄留者(ゲール)、Ⅲ.寄留者・敵意・歓待の問題、Ⅳ.アブラハムに対する神の約束としての祝福と呪い、V.バビロニア捕囚におけるシャローム:敵意の只中から歓待を呼び起こす道、Ⅵ.敵意に対する闘いとしての歓待/シャローム、について詳細な神学的考察を行った。
「神の祝福の約束を聞き続けるアブラハムとイサクの天幕という霊的空間は、行く先々で敵意に晒(さら)されかねない寄留者が最後まで希望を失わず、歓待と平和のために敵意と闘われる神の言葉に従うために、寄留者アブラハム、そしてイサクにとって不可欠のものであったと言えます」と金性済牧師は述べた。「その天幕礼拝の霊的空間こそ、『憎悪と敵意』の危険に晒される寄留者の心に湧き起こり得る『恐れと怒り・報復』が平和的な共生への希望へと変えられる上で、決定的に重要な意味を持っていたのです」
その上で、「今、キリスト教会は、そのスケープゴートとしてゼノフォビア(外国人嫌悪)に遭遇するマイノリティーの叫びに応えることが、この21世紀の宣教において避けて通ることのできない責任と言えます。つまり、そのマイノリティーの叫びの中に主イエス・キリストの呼び求める声を聞かなければならないのです。そして、教会はその応答の歩みの中で、共生の天幕の世界的連帯のネットワークを構築し、この問題を、神学と宣教の重要課題として共有しながら取り組む時を迎えています」と主張した。
さらに、「教会の道」について、「武力・戦争への道に明確に否を唱える平和の道と、平和と福祉を、社会を構成する全ての人々と分かち合う共生社会構築の道を、キリストの福音信仰に立ち決断し進む中で、教会形成と伝道の道を模索する宣教のパラダイムを構想しなければならないのです」と論じ、「そのための本質的な課題として、私たちは、マイノリティーに向けられる人間の敵意と憎悪、すなわちレイシズム(人種差別)の問題に今立ち向かわなければなりません」と訴えた。
そして、キリスト教会は人種差別撤廃施策推進法の制定のために忍耐強く市民運動と連帯し、その福音信仰の独自な立場からレイシズムの問題に対決していかなければならないと述べた。
最後に金性済牧師は、「それは、私たちがレイシズムに脅かされ、傷つけられる寄留者の立場から、またそこに寄り添いながら、神の正義が祝福として働くことを信じ、敵意と憎悪を歓待の正義(悔い改め・赦[ゆる]し・和解・平和)へと導かれる主の闘いに、自らの十字架を負い従う道でもあります。この道を退けるところに、レイシズムの加害と被害について修復的正義も治癒も実を結ぶことはできないのです。終わりの日に、『あの最も小さい者の一人が虐げられていた時に、あなたは何をしていたか』と必ず問い掛けてこられる主の御声に、今日私たちは聞き従おうとしているのでしょうか」と結んだ。