ドナルド・トランプ米大統領は、本格的な執務初日となった23日、海外で人工妊娠中絶や中絶教育の支援をする非政府組織(NGO)に対して、米国の連邦助成金を用いることを禁じる大統領令に署名し、「メキシコシティー政策」を復活させた。
このメキシコシティー政策は1984年、メキシコシティーで開催された国連の国際人口会議で、当時のロナルド・レーガン大統領(共和党)が発表したため、こう呼ばれている。民主党のビル・クリントン政権時代に撤廃(93年)されるも、共和党のジョージ・W・ブッシュ元大統領が復活させた(2001年)。しかし、民主党のバラク・オバマ前大統領が再度撤廃(09年)。そして今回、共和党のトランプ氏が、再び復活させた形になる。
一方、前日22日は、米国で中絶が合法化された「ロー対ウェイド判決」(1973年)の記念日でもあった。21日には、米国内ばかりではなく、ロンドンや世界各地で何十万人もの女性たちが反トランプの抗議デモに参加した。一方、こうした女性の権利を尊重し、中絶を認めるよう求める「プロチョイス」の立場の人々に対し、胎児の生命を尊重し、中絶に反対する「プロライフ」の立場の人々も行動を起こす。米政治専門紙「ザ・ヒル」によると、27日には、中絶反対を訴える毎年恒例の「マーチ・フォー・ライフ(いのちの行進)」が首都ワシントンで行われる。
共和党のマイケル・バージェス下院議員は同紙に対して、「生命はかけがえのない、神聖な賜物であり、私たちはそれを守るために自分たちにできるあらゆることを行わねばなりません」とコメント。「私はこの重要な決定をしたトランプ大統領を称賛し、中絶反対の方針を進め、国民の税金を守ることにおいて共に働き続けることを楽しみにしています」と述べた。
一方、民主党議員らは、この大統領令が女性の生殖権を縮小するもので、「危険な強迫観念」を反映していると公に非難した。
民主党のジーン・シャヒーン上院議員は声明で、「トランプ大統領の『グローバル・ギャグ・ルール(口封じの世界ルール)』(メキシコシティー政策の別称)の復活は、何十年もの調査を無視し、その代わりに女性と家族に関する観念的な政策に賛同するものです」とコメント。「私は、女性の生殖医療の利用を縮小することに熱心なトランプ大統領と共和党のリーダーシップに議会で抵抗し続け、グローバル・ギャグ・ルールを永遠に廃止する超党派の法を導入します」と語った。