キリスト教迫害監視団体「オープンドアーズ」のロナルド・ボイド・マクミラン戦略研究室長は、中国におけるキリスト教徒の総数が2030年までに3億人に達する可能性があるとの見方に触れ、「権力の共有」を迫られる共産党指導部が、キリスト教会の規模や影響力の拡大に危機感を抱いていると語った。
ボイド・マクミラン氏は英デイリー・エクスプレス紙(英語)に対し、習近平国家主席率いる中国共産党は、国内のキリスト教人口の増加に危機感を募らせており、結果として宗教に対する取り締まりを強化していると語った。
「中国の教会がそれほどまでに狙われていると私たちが考える根拠は、共産党の指導部が教会の規模や成長を恐れていることにあります。教会が1980年以降と同じ速度で成長すると仮定した場合、年間の成長率は約7~8%になります。その場合、2030年までに3億人強の集団となることが見込まれます。ご存じの通り、中国の指導部はかなり長期的な計画を立てています。彼らの経済計画は2049年まで続きます。そのためこのことは、指導部にとって悩みの種なのです。教会がそのように成長し続けた場合、彼らは将来的に権力の共有を迫られることになるからです」
オープンドアーズは、キリスト教に対する迫害がひどい50カ国をまとめたワールド・ウォッチ・リスト(2021年版)で、中国を17位にランク付けしている。中国では教会が「力強い成長」を遂げているが、現地のキリスト教徒の生活は決して平坦ではないとしている。
中国では教会の「中国化」、すなわち教会を国風に合わせる政策が全国で実施されている。共産党は、同党による社会の支配に脅威となるものを制限することで権力の座に留まろうとしており、そのために中国の文化的風土に強く依存している。
政府非公認の地下教会であれ、政府公認の三自愛国教会であれ、教会は全国で監視され、閉鎖に追い込まれたりしている。中国政府は聖書のオンライン販売も禁じている(関連記事:中国のネット通販から聖書消える、宗教締め付け強化か)。
個々の信者に対する監視には、ハイテクな監視装置が用いられている。新型コロナウイルス感染拡大の中、市民は個人情報を共産党に手渡すことを余儀なくされており、それにより政府当局は監視を強化できるようになった。
宗教に対する取り締まりは、キリスト教に限定されたものではない。主に北西部の新疆(しんきょう)ウイグル自治区に居住するイスラム教徒が主体のウイグル人は、中国共産党による集団拘束、強制労働、強制不妊の対象となっている。
このため、米国のトランプ前政権は中国政府を人権侵害で非難し、複数の共産党員に制裁を科した。また、マイク・ポンペオ前国務長官は任期終了直前の1月19日、中国政府が少なくとも2017年3月以降、同自治区のウイグル人やその他の少数派に対し、いずれも国際法上の犯罪となる「人道に対する罪」と「ジェノサイド」(大量虐殺)を行っていると認定する声明を発表した(関連記事:米、中国のウイグル族など少数派に対する「ジェノサイド」を認定)。
中国のジェノサイド認定は、バイデン政権のアントニー・ブリンケン国務長官も1月27日、就任後初めて開いた記者会見で維持する考えを示している。
中国政府は昨年6月、中国共産党への追従強化と反対意見の抑制を目的に「香港国家安全維持法」の可決を強行した。以来、複数の民主化運動家が逮捕され、一部は同法違反で禁錮刑を言い渡され収監された。
香港で教会開拓をしていた牧師で作家のフランシス・チャン氏は今年1月、香港当局がビザを取り消したため、米国への帰国を余儀なくされたことを明らかにした(関連記事:香港で教会開拓、中国系米国人牧師フランシス・チャン氏のビザ取り消し)。
チャン氏は家族と共に昨年2月、米国から香港の中でも特に所得水準が低いとされる深水埗(しんすいほ)地区に移住し、3つの教会を開拓していた。昨年12月には、香港で宣教活動をする中、恐怖の文化に圧倒されたことを明かし、香港ではクリスチャンを含め、多くの人々が恐れを持ち、死ぬことを本当に恐れていると語っていた。