回復の見込みがなく、死期が迫った終末期医療について、国立長寿医療センター病院(愛知県大府市)は3月中旬から、人工呼吸器をつけるかどうかなど延命治療に対する希望をあらかじめ患者に文書で出してもらう取り組みを始める。東京新聞が報じた。
延命治療の事前確認を制度として導入している医療機関は国内では少ない。全国6カ所にある国の高度専門医療センターでは初の試みとなる。
対象は同病院に通院する外来患者のうち文書作成を希望する人。文書は?心肺蘇生(そせい)?人工呼吸器の装着?抗生物質の使用?胃に通すチューブや鼻チューブによる栄養補給?点滴による水分補給――など、終末期の処置について希望するかしないかをチェックする形式。
痛みの緩和、自宅や病院など終末期を迎えたい場所を尋ねるほか、患者本人が判断できなくなったとき、主治医が相談すべき人の名前を書いてもらう欄も設ける。希望はいつでも変更できるという。
まず2月下旬に開かれる院内の倫理委員会の承認を得て、ポスターで希望者を募る方針。早ければ3月中旬から文書を配布する予定だ。
東京新聞によると、同病院第一外来総合診療科の三浦久幸医長は「患者本人の延命治療についての意思が分からず、主治医と家族が困っている現状がある。国の指針作成の参考になれば」と話している。
延命治療を含めた「尊厳死」問題に関しては、医学界、法曹界、宗教界、研究者の間でその是非が問われ続けている。生命維持のための医科学技術の発展は著しいが、生命維持治療の放棄に対する倫理的、法律的、社会的な問題は未解決のままだ。
「尊厳死」の問題は、キリスト教界でも意見が統一されていない状態。国民の死生観に大きな影響を及ぼす問題だけに、幅広い議論を踏まえた慎重な検討が求められている。