エジプト大統領が、国内のキリスト教徒を称賛している。ここ数年、キリスト教徒らは苦痛や嫌がらせを受けているが、それに対して「知恵と愛国精神」をもって対応しているためだ。
エジプトのアブデルファタハ・アル・シシ大統領は、「宗教を利用して分裂を引き起こし、過激思想を流布しようとする」者たちがいる中で、エジプトのキリスト教徒は一致団結していると語り、敬意を表した。
シシ氏は、コプト正教会の教皇タワドロス2世が、聖シノドの主教らを含むコプト正教会代表団と共に大統領官邸を訪れた際、出迎えの席でそう語った。
シシ氏は、エジプトにおいてキリスト教徒とイスラム教徒の団結が重要であることを強調し、宗派間の衝突防止のために形成された異教間協力団体「エジプト・ファミリー・ハウス」が団結を先導していることに謝意を示した。
大統領の発言は、コプト教徒が比較的多く住むエジプト中部のミニヤ県などで、キリスト教徒に対する一連の攻撃があったことを受けて語られたものだ。
7月初め、エジプト北部の村にあるコプト教徒らの自宅が襲撃され、放火された事件で、警察は15人を逮捕した。
事件の数日前、コプト正教会ミニヤ教区のアンバ・マカリオス大主教は、宗教的差別による暴力から市民を守る法律の強化を警察に求め、平均で10日に1回、襲撃が発生していると述べていた。
7月5日には、カイロ旧市街地にある聖マリ・ギルギス修道院の正教会修道女が、カイロ・アレキサンドリア・ハイウェー沿いで流れ弾に当たり、死亡した。
6月には、カルム・エルーフィー村でキリスト教徒の家々が襲撃され、ミニヤ県ではキリスト教徒が運営している幼稚園が放火された。さらに、同月30日にはコプト正教会聖ジョージ教会のラファエル・ムーサ主教が、過激派組織「イスラム国」(IS)により銃撃され、死亡した。
5月には、ミニヤ県に住む70歳のキリスト教徒の女性が、300人余りのイスラム教徒の暴徒によって服を脱がされ、女性が住む村の中を行進させられた。女性の息子が、イスラム教徒の女性と恋愛関係にあると、うわさされていたためだ。
2011年に起きた「アラブの春」以降、エジプトではキリスト教徒とイスラム教徒間の緊張が増している。最悪の事件は、15年2月のISによるエジプト人キリスト教徒の出稼ぎ労働者21人の斬首だ。
エジプトには、900万人のキリスト教徒がいると推定されている。そのほとんどがコプト教徒で、イスラム教スンニ派が大勢を占めるエジプトで、総人口の約10パーセントを占めている。