鳥取県弁護士会(鳥取県鳥取市)ならびに、同会人権擁護委員会は、カトリック信徒の男性受刑者が閉居罰中に新約聖書所持を認められなかったという申し立てを受け、4月27日付で鳥取刑務所に対し要望兼勧告書を提出した。県弁護士会は、信教の自由、宗教的自由の重要性を踏まえて、法の裁量権を適切に行使するよう要望している。
男性受刑者は、2014年1月の閉居罰執行中に新約聖書所持を申請したが、許可されなかった。さらに、同年2月の2度目の閉居罰執行中にも、再度申請したが聖書所持は許可されず、いずれの場合においても同刑務所は不許可の理由を、「閉居罰は自弁書籍の閲覧が禁止されており、聖書を入れることは禁止の趣旨に反する」と男性受刑者に対して説明していた。
県弁護士会は、要望兼勧告書において、「閉居罰中の収容者が宗教上の経典の所持を申請した場合、これを許可するかどうかの判断は、信教の自由、刑事施設と収容者の処遇に関して定めた法律が、収容者が一人で行う礼拝とその他の宗教上の行為を禁止・制限してはならないと定めている」と指摘し、聖書所持の不許可は同法に反するとしている。
これまでの県弁護士会の照会に対し同刑務所は、「閉居罰は、厳格な隔離のもとで謹慎させ、自己の犯した反則行為について反省を促すことを目的としているため、原則として書籍などの閲覧は停止する。例外として、被告人もしくは被疑者としての権利の保護または訴訟の準備その他の権利保護に必要と認められるものは除く」と法律で規定されていることから、「聖書は例外規定に当たらず、聖書を使用しなくとも信仰行為は可能であるため、聖書を所持しないことが一人で行う宗教上の行為を妨げないと判断した」と回答。
これに対し、県弁護士会は「収容者であっても、憲法の保障する基本的人権である信教の自由は保障される。閉居罰中の書籍などの閲覧が禁止されているのは、暇つぶしとなってしまい反省を促すための謹慎という閉居罰の趣旨が没却されてしまうからだ」とした上で、「他者との接触を絶った環境の中で、自己が真摯(しんし)に信仰する宗教上の経典を閲覧する場合には、そのことによって宗教的な感化を受け、自省の念が起きることが期待される。宗教上の経典の閲覧を許可したとしても、暇つぶしとはいえず、反省を促すために謹慎させるという閉居罰の趣旨にむしろ合致するといえる」と主張している。
男性受刑者は、同刑務所入所時にカトリック信徒であることを申告し、祈りに使うために聖書所持の申請を行っていた。また、以前服役していた大阪刑務所では、閉居罰中も聖書所持が認められたといい、県弁護士会が法務省に照会したところによると、閉居罰中の聖書の所持、閲覧を認めるかどうかの裁量権は各刑務所長にあるのだという。
これらのことを受けて県弁護士会は、同刑務所が、新約聖書が形式的に見て書籍などに当たるという理由のみをもって申請を不許可とした疑いがあるとして、信教の自由、宗教的自由の重要性を踏まえて、よりゆるやかに裁量権が運用されるよう要望している。