安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める「市民連合」の活動を応援するトークイベントが17日、早稲田大学大隈講堂で開催された。嵐のような天候の中、講堂が満席になるほどの市民が各地から集まった。
社会学者の上野千鶴子さん、法学者の長谷部恭男さん、作家の中沢けいさん、ジャーナリストの津田大介さん、精神科医の香山リカさん、エコノミストの浜矩子さん、作家の島田雅彦さん、NPO法人アジア太平洋資料センター(PARC)事務局長・理事の内田聖子さん、作家の落合恵子さん、SEALDs(シールズ)の奥田愛基(あき)さんらが登壇。短いスピーチをそれぞれの立場から行った。
落合さんは、嵐の中、会場に足を運んだ参加者をねぎらい、「私たちの一人一人のうちに秘めた怒りの嵐は、外の嵐よりももっともっと大きい」と話し、勢いよく話を始めた。「戦争、TPP、沖縄の基地の問題、皆、根っこは一緒。私たちの命の問題なのだ。私たちの命は、私たちのもの。権力に奪われてはならない」と話した。
そして、安保関連法成立前にある新聞に投稿された記事を紹介した。86歳の男性からの投稿であった。彼は、戦時中、特攻隊の予科練生として訓練を受けていた。衆議院での採決をいたたまれない気持ちで見ていたという。
しかし、SEALDsを中心とする若者たちが国会前で声を上げるのを見て、「うれしくて、うれしくて、体の芯から熱くなり、涙が湯になるようであった。特攻で死んだ先輩たちに『今こそ、俺たちは生き返ったぞ!』と叫び、むせび泣いた」と投稿した。落合さんは「今なら、まだやれる! 今しか、できない! 思い上がった権力にくさびを打ち込みましょう!」と参加者にエールを送り、スピーチを終えた。
数日前に、2度目の殺害予告がネット上を賑わわせていたという奥田さんは、「本当は、こんなことを言いたくはない。黙っていたいとも思った。しかし『嫌なものはイヤ』と言えることは大切なのではないか。それが『私が私のままでいること』だと思う」と話した。
それは、自分勝手に生きるということとは違う。個人でなくなってしまう国家はどこかおかしいが、社会というのは1人では作ることができない。「民主主義とは、自分が自分のままで共に生きていける社会のことではないか」と話すと、会場からは大きな拍手が起こった。
SEALDsのメンバー内でも、この「自分が自分らしくデモに参加する」といった部分に、昨夏、大きな議論が起こったという。「『デモは、皆が同じことをコールする。これが気持ち悪い』というメンバーがいた。そうした議論の中で、SEALDsのコールは『民主主義ってなんだ?』が先頭にくることになった」
「初めのうちは、ただそれを繰り返しているだけだった。しかし、昨年7月15日の衆議院における安保法採決の際に、国会前でデモを行っているとき、自然発生的に『民主主義ってなんだ?』『これだ!』のコールに変わった」という。
また、24日に行われた北海道5区の衆議院補欠選挙について、その選挙方法に今までとは大きな違いがあることも話した。多くの市民が積極的に関わっていたというのだ。奥田さんが応援の演説に駆けつけると、同じくらいの年頃の学生が「国会前の様子や、デモの様子をいつもテレビで見ていた。あなたたちにたくさんの勇気をもらった」と話され、「僕たちのやっていたことは無駄ではなかったと実感した」と話した。
今夏に予定されている参議院選挙に関して、「昨夏は、私が私のままデモに参加することが目標だった。今年は、私が私のまま選挙に参加することが目標。もしかしたら、今回の選挙は、今まで選挙から一番遠かった人たちが変えるのかもしれない。政治は、私たちのためにあるのだから」とスピーチを締めくくった。