今夏、国会前や全国各地で「だれの子どももころさせない」を合言葉に、9月19日に可決、成立した「安全保障関連法」に反対の声を上げた「安保関連法に反対するママの会(通称:ママの会)」。可決後もなお、さまざまな形で活動を続けている。
ファーストネームで呼び合う彼女たちは、数カ月前に志を一つにして、初めて顔を合わせた仲間たち。生後数カ月の赤ちゃんの「ママ」もいれば、成人した子どもがいる「ママ」もいる。全国各所のイベントに参加してアピール活動を行ったり、勇気を振り絞って街頭に出て、マイクを持ったりすることもある。彼女たちの活動は、主に平日の午前中。夫や子どもたちを見送った後、家事を済ませて集まる。数時間に集中した会合を終え、幼稚園のお迎えやバスの時間に合わせて、足早にその場を後にするママもいれば、小学生組、それ以上の子どもたちを持つママは、お茶などを飲みながらじっくり意見を交わすこともある。愛する子どもたちや家族と共に笑ったり、泣いたり、時に怒ったり、ママ友とショッピングやランチを楽しんだり・・・そんな日常の中に、突然降ってきたのが「安保関連法」への不信感と不安だったのだ。
可決以降は、各地域での活動が多い「ママの会」。千葉県内を中心に活動する「ママの会@ちば」は、20日、千葉県選出の小西洋之参議院議員(民主)と懇談会を行った。この日集まったのは15人のメンバーとママの手に抱かれた二人の赤ちゃん。小西議員が座る席には、お花が飾られ、数人のメンバーが手作りしたクッキーやカップケーキがテーブルの上に並んだ。これから、およそ憲法の話がされようとは想像がつかないほど、穏やかで楽しい空間であった。
小西議員といえば、9月19日の強行採決の場で、議長席に飛びかかり、議長のマイクを奪おうと佐藤正久議員(自民)に殴られたような格好になった写真で有名になった議員だ。懇談会の冒頭、「僕は、武道派のイメージがついてしまいましたが、普段は穏便な性格。僕にも3歳になる子どもがいるので、『パパ』なのですよ」とあいさつ。
憲法の前文を「ママ」、憲法9条を「子ども」に例えて話を始めた。「ママ」と「子ども」を引き離して考えてはいけないというのだ。憲法前文には、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」とある。「これぞ、まさしく、平和的生存権の主張であり、ママの会のテーマでもある『だれの子どももころさせない』なのです」と小西議員は話す。「『全世界の国民』とは、仮に同盟国のアメリカがどこかの国と戦っていたとしても、その双方ともの国民のことを示すのです」と続けた。
「この前文が憲法の解釈上の指針であるとするなら、平和的生存権があるのだから、仮に自衛隊を運用する事態に陥っても、これを無視して運用することはあり得ない。核兵器を自衛隊が輸送して、米軍に渡すことは、安保法が成立してしまった現在では法律上可能になってしまったが、これも本来は違憲。大量破壊兵器である『核兵器』を輸送するのは、平和的生存権に反する」と主張した。
また、憲法前文の他の箇所には、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」とある。「国家の判断で戦争を始めることができる権利が集団的自衛権。これもまた国民主権を無視しているから、違憲であることは明らか」と小西議員。
同法可決の日となった9月19日の深夜、審議が行われていた国会内でも、国会の外で響く抗議行動の声は十分に聞こえていたと小西議員は話す。「その声に勇気をもらって、野党議員たちは奮起していた」とも話した。
小西議員の話の後に、ママの会と懇談が行われた。来夏に行われる参院選に野党共闘で戦う意思があるかについては、「共闘はしていきたいと思うが、民主党の公式見解でもあるように、連立政権はない」と答えた。また、同会からは、野党共闘で参院選を戦う旨の要望書が小西議員に手渡され、「パパもがんばります!」とそれに応えた。
この日、初めてママの会に参加したメンバーもいたが、2時間あまりの講演会は瞬く間に終わった。「もう頭がパンパン!」と話すママもいたが、「また一緒に勉強していこう」とお互いを励まし合えるのが、ママの会の強みなのだ。今後も「ママの会@ちば」では、県内で弁護士や法の専門家を招いての「憲法カフェ」や街頭でのアピール活動に参加する予定だ。