【CJC=東京】2013年に選出された直後、バチカン(ローマ教皇庁)の「手に負えない」体制を目の当たりにした教皇は、教会の幹部らを前に、膨れ上がる人件費、チェックなしの支出、そして不当な代金を請求する業者との裏取引のせいで教会の財政は破綻に向かっているとして、怒りをあらわにした、とAFP通信が報じた。
教皇の怒りの声を耳にしたのは、一握りの枢機卿やバチカン経済部門機構改革委員会の委員だけのはずだった。だがこの時、ひそかに発言が録音されていた。
それから2年、録音された音声が、イタリアの著名な調査報道ジャーナリスト、ジャンルイージ・ヌッツィ氏の新著『聖堂の中の商人たち』の中で再現された。
11月4日に出版記念会見を行ったヌッツィ氏によると、教皇とバチカン内部の利権享受者との消耗戦は現在も続いており、教会変革に向けた闘いに教皇が勝利できるかどうかはまったく不透明だそうだ。
ヌッツィ氏は、世界各地のカトリック信者が「ペトロのペンス」という献金制度を通じてバチカンに寄せた献金のうちの6割がバチカンの赤字の補填(ほてん)に使われ、2割が準備金口座に回されており、本来の目的である慈善活動のために教皇が受け取るのは2割にとどまっているという。
このほど刊行されたエミリアーノ・フィッティパルディ氏の著書も、「ペトロのペンス」について同様の指摘をしている。2013年の同制度での献金総額は3億7800万ユーロ(約500億円)という。