2013年の超大型台風で大きな被害を受けたフィリピンへの支援のため、昨年、フィリピン・タクロバンの教会と協力して10週間にわたる支援プロジェクトを行った新生宣教団が、今年は首都マニラやミンダナオ島の子どもたち約8000人を支援するプロジェクトを行う。現地のスラム街で子どもたちに教育支援活動を行っているキリスト教の慈善団体「ダイナミック・ティーン・カンパニー」(DTC)や、フィリピン教育省と協力し、新生宣教団が制作するマンガ聖書を道徳教育の教材として提供することでプロジェクトを進める。8月から始まるプロジェクトを前に、DTCの創立者であるエフレン・ペニャフロリダ氏が初来日し、6日、フィリピン大使館(東京都港区)で記者会見を開いた。
1981年にフィリピンのスラム街で生まれ育ったペニャフロリダ氏は、「クラブ8586」という恵まれない子どもたちの教育を支援するNPOの援助を受け、高校と大学に進学した。まだ高校生だった16歳のとき、スラム街で暮らす子どもたちが、教育を受け、自分と同じように新しい未来を切り開いてほしいと願い、青少年のグループを立ち上げ、「DTC」と名付けた。そして、クラブ8586と協力しながら「プッシュカート・クラスルーム」(手押し車による移動教室)を始めた。
手押し車に、本やペン、机、いすなど、学校で使うものを載せ、墓地やゴミ捨て場などで毎週土曜日に「教室」を開いた。この活動が世界で高く評価され、2009年には、人を助けるために驚くべき貢献をした個人に贈られる米CNNの「ヒーロー・オブ・ザ・イヤー」に、100カ国以上で9000人余りが推薦される中から選ばれた。この受賞をきっかけに、プッシュカート・クラスルームは多くの人から支援を受けるようになり、ついにはフィリピンの教育省も興味を示すようになったという。
ペニャフロリダ氏は昨年、プッシュカート・クラスルームでマンガ聖書を教材として取り入れた。読み書きや計算といった基礎的な教育から、遊ぶことや食べることまで、さまざまなことを教えるプッシュカート・クラスルームで、マンガ聖書は、良い考えを教える道徳教材として非常に役に立っているという。子どもたちは、聖書が与える前向きな希望のあるテーマによって励まされていると言い、「マンガは見た目で興味を引くため、文字だけでは分からなくても、絵を通して楽しく伝えることができる」と、マンガ聖書の長点を説明した。
プロジェクトは、新生宣教団とDTC、フィリピン教育省が協力し、今年8月から12月までの5カ月間にわたって行われる。100のプッシュカート・クラスルームを出すことで、約8000人の子どもたちに教育を受ける機会を提供する計画だ。マニラでは路上生活をしている子どもたちが多くおり、対立を起こすギャング・グループに加わらないよう教えるため、マンガ聖書を用いるという。
新生宣教団のアソシエイト・ディレクターであるウィルフレッド・タトロンハリ氏は、日本のマンガについて、「ストーリーがしっかりしていて、大人が読んでも満足できる」と言う。また、異文化交流にもつながるとして、マンガ聖書が日本とフィリピンの架け橋になることを期待していると語った。
ペニャフロリダ氏は記者会見の最後に、日本の子どもたちに、路上生活をしなくてもよいことは特権であることを分かってほしいと語った。「フィリピンでは、教育を受けられない子どもが大勢いることを知ってほしい」と話し、毎日学校に通えることや、自分だけの教科書、学用品があることは本当に恵まれていることだと語った。
ペニャフロリダ氏は日本に滞在している間、東京都内の教会などで複数の講演会を予定しており、9日(木)にはNHKの国際放送「NHKワールド」のニュース番組「ニューズライン」に出演する。12日(日)には午後4時からウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会(東京都新宿区)で行われる「ホープ・フォー・リビングの集い」に特別ゲストとして参加し、13日(月)に帰国する予定だ。