昨年12月に東京都内で開かれた第4回9条世界宗教者会議に出席した世界教会協議会(WCC)のオラフ・フィクセ・トヴェイト総幹事は、帰国後に安倍晋三内閣総理大臣宛ての手紙を記し、同会議準備委員会委員長で日本キリスト教協議会(NCC)議長の小橋孝一牧師に託した。同会議事務局(東京都江東区)が27日に発表した。同事務局によると、手紙は翻訳を添え、すでに内閣宛てに発送されたという。
トヴェイト総幹事は手紙で、同会議の最終声明を全面的に支持するとして、憲法9条の再解釈・改変は、「日本と近隣諸国との関係をさらに脆弱にし、不安定にする」と指摘。「世界の宗教団体は憲法九条をアジアにおける平和の支柱であり、また他の地域の国家の規範でもあると考えています」「憲法九条は再解釈されるべきではなく、むしろ再確認されるべきです」などと述べている。
以下は、同会議事務局によるその手紙の日本語訳。
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2015年1月16日、ジュネーヴ
世界教会協議会より日本国憲法第九条に関しての見解
親愛なる内閣総理大臣安倍晋三閣下
世界140か国、350のキリスト教教団により構成される世界教会協議会の総幹事として、2014年12月に東京で開催された第4回九条世界宗教者会議に出席し、発題する機会を得ましたことは、大変光栄なことでした。爾来、世界教会協議会は、当該会議の最終声明を全面的に支持してまいりました。すなわち、
- われわれは憲法九条がアジアにおける平和の礎であると信じます。
- われわれは憲法九条が現在最も有意義な時を迎えていると確信します。
- われわれは日本国政府が憲法九条を守り、維持してくださることを謹んでお願い申し上げます。
- われわれは、憲法九条を再解釈、あるいは改変することは逆効果であり、日本と近隣諸国との関係をさらに脆弱にし、不安定にするものであると確信します。
東京の当該会議に代表を派遣した宗教団体を初め、世界の宗教団体は憲法九条をアジアにおける平和の支柱であり、また他の地域の国家の規範でもあると考えています。またわれわれは、日本が憲法九条を平和への手段、すなわち国際社会における英知、洞察、敬意、そして確実な体験として実践することにより、優れた貢献を果たしてきたことと認識しております。
世界教会協議会と平和への対話と行動を共にするパートナーは、正義と友好を求める行動や地域社会での憎悪に対して平和的解決を求める活動に対し、今こそ日本がリーダーシップを取り、また日本の国土やその領域に米軍基地を存続させていることへの負担を表明すべき時であると信じております。
このような状況において、憲法九条は再解釈されるべきではなく、むしろ再確認されるべきです。1993年の河野談話、1995年の村山談話、そして2010年の菅談話によって、日本国政府が近隣諸国に与えてきた歴史的苦難の事実に正式に言及したことは評価されるべきです。われわれは憲法九条が国内政治の周辺でなく、日本の国際政治の中心に置かれることを望んでおります。
最後に、われわれは憲法九条が日本の豊かな歴史の中で重要な位置を占めていること、決して過去の遺物ではなく、未来への規範であると確信していることを申し添えます。
この対話の重要性をご理解いただけることへの深い感謝を込めて、閣下。
オラフ・フィクセ・トヴェイト
世界教会協議会総幹事