アルバニアの中の少数派であるエジプト系だったドニカは、共産主義時代の無神論教育の影響を受けた両親やイスラムの民族アイデンティティーが入り混じる複雑な背景を持っている。ドニカは若くしてボマニと結婚して5児をもうけたが、やがて子どもたちは貧しいアルバニアを捨て、欧州の豊かな国々に移り住んでいった。貧しいながらも、何とかやりくりしていた二人だったが、そこには、ぽっかりと口を開けて彼らを待ち受ける人生の落とし穴があったのだ。(第1回から読む)
夫のボマニは、新しい友人たちと付き合うようになった。しかし、その友人たちは酒やギャンブルにのめり込んでいて、ボマニも彼らからの影響を免れなかった。「夫はその友人たちと長い時間を過ごし、彼らのようになってしまいました。酔っ払って帰宅するのが当たり前となりました。ギャンブルをしてお金を全て失ってしまったのです。酒代やギャンブルするためのお金がなくなると、夫のイライラが募り、彼は暴力的になったのです。おかげで、わが家では毎晩、けんかが絶えませんでした」
ドニカは絶望し、悲しみ、孤独を感じるようになった。ある日、彼女は泣き叫んで言った。「神様!本当にあなたが存在するなら、どうか私に現れてください!」すると翌日、この祈りが聞かれたのだ。家の近くで、クリスチャンの音楽コンサートが開かれていることを知った彼女は、そこに駆けつけ、すがるような思いで耳を傾けた。
「あの日、私は初めて福音を聞きました。ああ、今思い出しても胸がいっぱいになります。イエス・キリストの愛と罪の赦(ゆる)しについて初めて聞いたのです。そして、イエス・キリストは、どんな者であろうと、ご自身を信じる全ての者をお救いになるのだということを聞きました。それは大きな希望と期待感、そして喜びを私に与えたのです。私はこの希望の言葉に飛びつき、しがみつきました」
コンサートが終わると、ドニカは主催者の一人に、今夜語られた福音にいたく感動したことを伝えて、自分の電話番号を渡した。翌日、地元教会の信者から電話があり、日曜日の礼拝と祈り会に誘われた。そこに解決があると確信していた彼女は、何の迷いもなく、これに参加した。「とてもうれしかったです! 私はメッセージを聞き、聖書を通して語られる神の言葉を聞きました。これこそが自分の居場所だと感じました。置かれている私たちの生活はひどいものでしたが、私は喜びと希望を感じていたのです」(続く)
■ アルバニアの宗教人口
イスラム 80・3%
プロテスタント 10・8%
カトリック 3・1%
儒教 0・9%
仏教 0・4%
ヒンズー教 1・3%
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