米実業家のイーロン・マスク氏が、自身は「文化的なクリスチャン」だと語った。また、トランスジェンダー女性の自身の子どもについて、「騙されて」性別移行に同意したと述べ、近年のトランスジェンダーを巡る動きに否定的な考えを示した。
「私は特に宗教的な人間ではありませんが、イエスの教えは善良で賢明であり、(片方の頬をたたかれても)もう一方の頬を差し出すことに多大な知恵があると信じています」。マスク氏は23日、米保守系メディア「デイリーワイヤー」(英語)で、心理学者のジョーダン・ピーターソン氏のインタビューに応え、そう語った。
いじめっ子に対して「鼻を殴る」ことが正当化されることもあるとしながらも、マスク氏は復讐(ふくしゅう)の追求は結局のところ無駄だと指摘。「私はキリスト教の原則を心から信じています。それらはとても良いものだと思います」と語った。
ピーターソン氏からどのような意味で宗教的でないのかを尋ねられると、マスク氏は答えあぐねたが、ピーターソン氏は、無神論者として有名な生物学者のリチャード・ドーキンス氏が最近、キリスト教の超自然的な教義は信じていないが、自らを「文化なクリスチャン」と語ったことに言及(関連記事:著名な無神論者のリチャード・ドーキンス氏、自身を「文化的なクリスチャン」だと語る)。マスク氏はそれを受け、ドーキンス氏とは多くの会話を重ねたことがあるとし、次のように述べた。
「恐らく、私は文化的なクリスチャンだと思います。私は聖公会で育ち、洗礼を受けました」
マスク氏は、過去にもキリスト教の文化的影響を評価する発言をしている。2023年には、「西洋はキリスト教を失ったら絶対ダメになる」とする英国人ラッパーのZUBY氏のX(旧ツイッター)上の投稿(英語)に対し、「あなたは恐らく正しい」とコメントして同意を示した。
21年には、米キリスト教風刺サイト「バビロンビー」のインタビューで、イエス・キリストを「個人的救い主」として受け入れるかどうかを尋ねられたが、否定はしなかった(関連記事:イーロン・マスク氏、イエスの教えに賛同「偉大な知恵がある」)。
その一方で、22年には、創造主である神を認め告白するよう促す、サウジアラビアサッカー連盟会長のヤセル・アル・ミセハル氏のX上の投稿(英語)に対し、「祝福をありがとう。でも、もし本当に地獄が私の目的地なら、私は地獄に落ちても構わない。なぜなら、生まれてきた人間の大半がそこにいるのだから」と答えている。
12人の子どもを持つマスク氏はこの他、ピーターソン氏とのインタビューで、ザビエルという名の男性から、ビビアン・ジェナ・ウィルソンという名の女性に性別移行した自身の子どもについても語った。マスク氏は、この性別移行について「騙されて」同意したと述べ、自身の子どもは事実上「死んだ」と語った。
「年長の息子の一人であるザビエルのために、私は本質的に騙されて書類にサインさせられました。何が起こっているのか理解していなかったのです」
マスク氏は、当時は新型コロナウイルスのパンデミックのため「多くの混乱があった」とし、「思春期ブロッカー」と呼ばれるホルモン抑制剤の投与に同意しなければ、自身の子どもが自殺するかもしれないと言われたと語った。
「このことを推進してきた人々が刑務所に行くべきだという意見に、私は賛成です。私は騙されたのです。思春期ブロッカーが、実は単に不妊にする薬だとは説明されなかったのです」
「こうして私は、本質的に息子を失いました。(名前を変更したトランスジェンダーの元の名前を)デッドネームと呼ぶのには理由があるのです。それは、息子が死んだからなのです。私の息子、ザビエルは死んだのです。『ウォーク・マインド』というウイルスに殺されたのです。その後、私はこのウイルスを破壊することを誓いました」
ウォーク・マインドは「目覚めた心」を意味し、社会問題に意識が高いことを意味するが、そうした意識が高い人々を揶揄(やゆ)する言葉としても用いられる。
トランスジェンダー女性の自身の子どもを巡るマスク氏の発言は、同情と批判の両方にさらされた。
マスク氏はこの他、16日には自身が運営するX社と、宇宙企業のスペースX社の本社をカリフォルニア州からテキサス州に移転することも発表している。これは、子どもが自らの生物学的な性別と異なる性別で認識されることを望む場合、学校がそれを保護者に通知することを禁止するカリフォルニア州の新法(通称「セーフティーアクト法」)への反発としての措置。
マスク氏は自身のX上の投稿(英語)で、「我慢の限界だ」とし、「この法律とそれに先立つ多くの法律が家族や企業を攻撃している」と主張。同法を承認したカリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事に対して、「なるほど、今や州が親というわけ?」と皮肉った米国人投資家のジェイソン・カラカニス氏の投稿を引用した。