2024年3月7日11時27分

小さい者の味方 穂森幸一

コラムニスト : 穂森幸一

きょう、あなたがたはみな、あなたがたの神、主の前に立っている。すなわち、あなたがたの部族のかしらたち、長老たち、つかさたち、イスラエルのすべての人々、あなたがたの子どもたち、妻たち、宿営のうちにいる在留異国人、たきぎを割る者から水を汲む者に至るまで。あなたが、あなたの神、主の契約と、あなたの神、主が、きょう、あなたと結ばれるのろいの誓いとに、入るためである。(申命記29:10〜12)

今、世界中が混沌としていると言っても過言ではない状況です。行き過ぎた気候変動政策により、エネルギー問題が不安定化し、産業構造に歪みが生じています。また、欧米では、大量の不法移民の流入により、社会秩序の崩壊、街の美観を損ねるスラム化、ごみの不法投棄、治安の悪化などの問題が山積し、行き詰まっているように見えます。

米国とメキシコの国境には連日、大量の不法移民が押しかけていますが、民主党政権になってから実に1千万を越す人々が流入しているという試算もあります。そして、この移民の中に数十万人の中国人が含まれているというのです。第三国を経由しながら南米のどこかの国に入国し、徒歩でメキシコに入り、米国との国境を目指しているのです。自分たちの国の行く末に不安を感じているが、正規のルートでの入国は難しいので、難民という形で入国を試みているそうです。

どんな形であれ、いったん入国し、難民申請をすれば、米国政府がシェルターを用意し、月の限度額千ドルの政府保証のクレジットカードを渡してくれるので、食料の確保はできるそうです。流入してくる人々があまりにも多いため、十分な審査ができず、南米のギャングの一味が紛れ込んだりもしており、犯罪の増加や地方政府の財政負担が問題化しています。

不法移民の中に、中国本土でのキリスト教信仰の迫害を理由に亡命申請している中国人がいるということがニュースになっていました。中国の地下教会には数千万人の信者がいるともいわれます。経済的事情で国外脱出する人々の中に、地下教会のクリスチャンが紛れ込んでいてもおかしくありません。自由主義陣営の教会としてもどのように取り組んでいくのか、大きな課題になると思います。

日本人は縄文時代から地球規模の移動を実現し、グローバルな交流をしていました。また、日本に渡来してくる人々を寛大に受け入れていました。シルクロードの終点は奈良だったといわれるように、平安時代までは自然な形で外来者を受け入れていたようです。

日本の社会には古来、同化吸収する力があり、いつの間にか同一になっている感じです。DNAを研究しているある学者が、日本人の中には世界中の全ての人種の遺伝子が入っていると言っても過言ではないと語っています。

一方、海外から押し寄せる武装勢力や権力者に対しては、日本の為政者たちが果敢に立ち向かい、国民を守ってきました。元寇の時がそうであり、アジア全域が欧州の植民地支配にのみ込まれるときにも対抗し、独立を維持しています。

戦国時代にポルトガル人が鉄砲を伝えましたので、急速に鉄砲が日本に広まり、欧州中の全ての鉄砲の数より日本の方が多いと言われるほど普及しました。そのために火薬が必要となり、ポルトガル人の奴隷商人が火薬一たると奴隷50人という交換条件で入り込んできました。

日本人奴隷はマカオに集結させられ、欧州から南米まで売られていきました。過酷な条件下で酷使されましたが、ポルトガルでは働きぶりが認められて、自由が与えられ、家族として受け入れられた女性もいました。また、アルゼンチンに売られた少年は言葉を覚え、法律を勉強し、不当な理由で奴隷に売られたと裁判所に訴えて自由を獲得したという例もありました。

奴隷制度の実態を知った豊臣秀吉は激怒し、ポルトガル船に積み込まれた奴隷を買い戻しています。また一部の宣教師が奴隷商人とつながりがあったということが分かるとバテレン追放令を出しています。日本人奴隷を取り戻す目的でマカオまで行くために朝鮮出兵を試みたという説もあります。秀吉の発布した奴隷禁止の法令は受け継がれていきます。

海外から押し寄せる難民には、先人たちに学びながら、寛大な精神で臨むことが必要ではないかと思います。しかし、どんなときにも秩序を保ち、お互いの文化を尊重しながら同化吸収できれば、いい方向に向かうのではないでしょうか。最も小さい者、弱い者に配慮を示されたキリストの精神が、今ほど問われている時はないと思います。

わたしの弟子だというので、この小さい者たちのひとりに、水一杯でも飲ませるなら、まことに、あなたがたに告げます。その人は決して報いに漏れることはありません。(マタイ10:42)

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穂森幸一

穂森幸一

(ほもり・こういち)

1973年、大阪聖書学院卒業。75年から96年まで鹿児島キリストの教会牧師。88年から鹿児島県内のホテル、結婚式場でチャペル結婚式の司式に従事する。2007年、株式会社カナルファを設立。09年には鹿児島県知事より、「花と音楽に包まれて故人を送り出すキリスト教葬儀の企画、施工」というテーマにより経営革新計画の承認を受ける。著書に『備えてくださる神さま』(1975年、いのちのことば社)、『よりよい夫婦関係を築くために―聖書に学ぶ結婚カウンセリング』(2002年、イーグレープ)。

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