新型コロナウイルスのパンデミックもすでに3年目に入りました。日本ではここ最近、感染者がまた急増し、1日の感染者数が全国で18万人を初めて突破し過去最多となっています。世界的にもまだ感染が収まったとはいえない状況ですが、多くの国では感染を抑えつつ経済を回し、コロナとの共存を目指す方向で進んでいるのではないかと思います。
ニューヨークも、新型コロナウイルスを根絶することはできないと判断し、通常のインフルエンザと同じようにコロナと共存していく道筋を立てました。PCR検査はこれまでと変わらず、無料で受けられる会場が用意されており、申請すれば家庭用検査キットも無料で提供されます。申請はオンラインで簡単にでき、検査キットは郵便で送られてくるため、高齢者や小さい子どもがいる家庭には非常に便利です。感染したかどうか不安を抱えながら生活すれば、精神的な健康を損なう可能性があります。また、抗体検査も無料で受けられ、ワクチン接種前後に抗体がどれくらい自分の体内にあるかを調べることができます。「自分がしてほしいことを人にもしてあげる」というゴールデンルールが、国や州、市などの各行政レベルで行われたといえます。
しかし、コロナ禍によって生活様式が変わったことは確かです。私の通っているナイアック大学も、感染状況がよくない時期は、対面とオンラインを併用したハイブリッド授業を行ってきました。しかし今秋からは、ハイブリッド授業をやめて対面授業のみに戻す予定とされています。ただ、学生からは「引き続きハイブリッド授業を継続してほしい」という声も多くあります。理由は、通学の手間が省け、どこにいても授業を受けることができるメリットがあるからです。
確かにコロナ禍で多くの人が一時期、仕事を失ったり、学校に通えなくなったりしました。しかし、企業も学校もコロナ禍でも対応できる仕組みを作ることができたため、仕事も学業も自宅で続けられるようになりました。私も学業の合間に引き受ける仕事はほとんどオンラインなので、通学の時間は確かに負担になります。実際、今学期にキャンパスまで登校してくるのはごく一部で、残りはオンラインで授業に参加しています。私は大学には30分程度で行けるのですが、感染だけでなく、事故や事件などに巻き込まれるリスクもない自宅で授業に参加できるのは魅力的です。ニューヨーク市警の発表(英語)によると、ニューヨーク市内の犯罪件数は今年、1月から6月までのすべての月で、前年同月より27~58パーセントも増加しています。そのため、私もハイブリッド授業賛成派です。
また仕事も、リモートワークとオフィスワークの併用が普通になったように思います。ちょっとでも体調が悪いと思ったら、近くの会場(あるいは自宅)でPCR検査を受け、陽性ならばしばらくはリモートワークとなります。私の米国人の友人は、「陽性になったら、しばらくオフィスに行かなくて済むから助かるんだけどなあ」などと、半分ジョークのような本音を漏らしており、リモートワークは当たり前になりました。
私も、音楽ビジネスコンサルテーションの仕事はすべて、グーグル・ミートを使って行っています。これまでのクライアントは、ニューヨークにいる人がほとんどでしたが、現在はクライアントの全員が日本在住者です。しかも、彼らのほとんどは家事や育児、仕事の合間にセルフプロデュースの仕方を私から学んでいます。これまで絶対に不可能であったことを、彼らは日本にいながらにして、できるようになったのです。画面やファイルを共有しながら、私のこれまでの経験を若い音楽家に伝えることができます。とても便利で、なぜ今までこうしなかったのかと思うほどです。
これは教会でも同じことがいえます。すっかりオンライン礼拝に慣れてしまった人々が、教会に足を運ぶかどうか疑問です。一方で、コロナ前は教会に通っていなかったという人が「オンラインだったら」と、礼拝に参加するようになったケースもあります。例えば、私が通う教会「ベテル・ゴスペル・アセンブリー」(英語)では、コロナ前はフェイスブックでサブ的なオンライン配信しかしていませんでした。しかし、本格的なハイブリッド礼拝となってからは、よりアクセスしやすいようユーチューブ(英語)でも配信を始めました。ユーチューブのチャンネル登録者数は7月21日時点で1350人。フェイスブックのオンライン礼拝参加者や、実際に礼拝堂にまで来ている参加者を合わせれば、礼拝参加者はコロナ前よりも多くなります。
現代社会は多様性の時代。仕事のシフトもマチマチですから、場所や時間にとらわれずに礼拝に参加できるのは便利なことです。これまで病気や介護、子育て、仕事など、さまざまな理由で日曜日の礼拝に出席できなかった人たちに対し、教会が大きく開かれたように見えます。
私たちの教会は、今でも慎重な感染症対策をキープしています。礼拝堂に入りたい人は、月曜日から木曜日までにオンラインで登録します。そして金曜日に、マスク着用やソーシャルディスタンスなどの規約に同意した人のみに、招待状が送られてきます。事前登録をしない人は礼拝堂内に入れません。現在は、約1800席ある礼拝堂に毎週200人ほどが来ており、他はオンラインで参加しています。
私は自分のフェイスブックに、毎週日曜礼拝の動画を投稿しています。しかし、その投稿に反応を示してくれる人は、最初数人しかいませんでした。それが今年に入ってからは数十人が反応を示してくれるようになりました。もちろん、単純に「いいね」を押しているだけかもしれません。しかし、この増加は福音(ゴスペル)を聞きたいと関心を持っている人が増えていることの表れとも考えられます。
またクリスチャンが少ない日本では、礼拝でどのようなことが行われているのか、多くの人は知りません。どれくらいの時間がかかるのか、どんな話をしてくれるのか、どんな歌を歌うのか、子どもは連れて行ってもいいのかなど、ノンクリスチャンの人は何も分からないのです。ですから、オンラインで礼拝の様子を伝えることは、教会のPRにもつがると考えました。実際、私も幾つかの教会の礼拝の様子をユーチューブで見て、「日本に行ったら、この教会に行ってみたい」と思える教会を発見しました。礼拝の様子をオンラインで見たことがきっかけで、教会に足を運ぶことに興味を持つ人が増えるかもしれません。
ハイブリッド礼拝は大きな教会だけでなく、小さな教会でも行われています。今年1月2日に、マンハッタンから鉄道で30分ほどの所にあるニューヨーク日本語教会に、ゲストスピーカーとして招待していただいた際、少し状況を聞いてみました。苦労はあるようですが、もともと小さなスペースで、少人数で礼拝を行っていたため、ハイブリット礼拝にすることは利点の方が大きいかもしれません。
「コロナ前は、礼拝をオンライン配信していませんでした。試行錯誤を繰り返し、やっとオンライン配信できるようになった感じです。良い点は、Zoomになったので、遠方の先生にもお話をお願いできることです。そして今は、ニューヨーク市内からだけでなく、(約3500キロ離れた)ユタ州からの参加者もいます。日本からは真夜中なのにもかかわらず、参加してくれる人もいます」(同教会の田邉尚玄さん)
田邉さんが音響機材やパソコンなどをすべて持ち込まなくてはならず、礼拝前のセッティングは大変そうに見えました。しかし、遠方からでも礼拝に参加でき、ゲストスピーカーを世界中どこからでも呼べるということを考えると、やはり大きなメリットだと思います。コロナ禍で生活様式が変わったことは、ゴスペルを広く伝える機会を大きく広げることにつながっているのではないでしょうか。
「全世界に出て行き、すべての造られた者に、福音を宣(の)べ伝えなさい」(マルコ16:15、新改訳2017)
私は最近、noteで新しく音声によるバイブル解説を始めました。各回10~15分ほどで、誰にでも分かるような敷居の低~い(笑)解説なので、空き時間に気軽に聞けると思います。テクノロジーを駆使したさまざまな宣教の形があってよいと思いますので、私のnoteも、皆さんの宣教活動に用いていただけたらうれしいです。
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