世界的なネットワークを持つヒルソング教会のブライアン・ヒューストン国際主任牧師が、今年末まで現在の立場を退く意向を発表した。ヒューストン氏は昨年8月、牧師であった父親の約50年前の児童性的虐待について隠蔽(いんぺい)した疑いがあるとして起訴されており、訴訟に集中するためという。この間、南アフリカで牧会しているフィル・ドゥーリー牧師と妻のルシンダ牧師が暫定的に国際主任牧師に就任する。
「昨年、私は予期せぬ形で(父の)フランク・ヒューストンを起訴するために必要な情報を隠したとして起訴されました。これは私にとって衝撃でした。今後は精力的に反論していくつもりです」。ヒューストン氏は声明(英語)でそう述べ、「そのため私は、今年末まですべての教会の責任から身を引くことに同意しました」と語った。
オーストラリアの警察当局は昨年8月、ヒューストン氏を「児童性犯罪の隠蔽」の罪で起訴したと発表した。ヒューストン氏は当時、ヒルソング教会を通じて発表した声明で、「今回の起訴は、私がこの件に関して常に透明性を保ってきたことを考えるとショックです。私は断固として無実を主張し、これらの訴えに反論します。また、記録を正すことのできるこの機会を歓迎します」と述べていた(関連記事:ヒルソング教会国際主任牧師、性的虐待隠蔽容疑で起訴される 「断固として無罪を主張」)。
声明によると、ヒルソング教会の外部法務顧問が昨年12月の理事会で、訴訟が長引き、2022年いっぱいかかる見通しであることから、訴訟中は教会の指導的立場から完全に身を引くことが最善だと助言したという。
1983年にシドニー郊外でヒルソング教会を始め、世界的なメガチャーチへと成長させたヒューストン氏は、「この訴訟を戦い、記録を正す機会を勝ち取るつもりです」と述べ、妻のボビー牧師に関しては、今後も変わりなく教会に関わり続ける予定だと付け加えた。
暫定国際主任牧師となるドゥーリー牧師夫妻については、「私たちの教会の多くの人々に愛されており、オーストラリアで長年にわたって青年牧師として成功裏に仕えてきました」と紹介。「この13年間、彼らは家族と共に南アフリカに居住し、(現地で)複数の拠点を持つ驚異的なヒルソング教会を育て上げました」と語った。
ヒューストン氏は、1970年代に父で牧師の故フランク・ヒューストン氏が未成年者に性的虐待を行っていた事件をめぐり、2014年に王立委員会の調査に応じている。ヒューストン氏はその際、父親が被害男性に1万ドル(約110万円)の賠償金を支払っていたことは、何も知らなかったと否定。父親の虐待を知り、「完全に打ちのめされました」と述べ、「自分が尊敬していた人物が、自分が思っていた人物ではなかったという事実を受け入れなければなりませんでした」と語っていた。
なお、ヒューストン氏はすでに昨年2月、教会の急速な成長に対応し、若い指導者による効果的な組織改革を行うことを理由に、ボビー氏と共に指導的立場から退く意向を表明。2年かけ、ロンドンで牧会しているゲイリー・クラーク牧師と妻のキャシー牧師に現在の立場を引き継ぐことを発表していた(関連記事:ヒルソング教会創設者のヒューストン牧師夫妻、指導的立場退く意向表明)。