イエス・キリストは本当にいたのか。
もちろん、実際にいました。このイエス・キリストが歴史上BC5、6年ごろ、ローマ帝国の版図の中のユダヤに生まれ、30歳ごろからおよそ3年半の間、大勢の弟子とともに、ユダヤ、ガリラヤの辺りを巡回伝道し、力ある業と知恵の言葉で民衆を導き、支配層(祭司・律法学者・パリサイ人ら)に敵対されながら、最終的には捕らえられ、不当な裁判を受け、AD30年ごろ、十字架刑にかけられて死にましたが、しかし、3日目に復活し、昇天しました。
このことは、4つの福音書に詳しく記述されています。その事実を土台として、弟子たちがイエスの十字架の死と復活のことを宣べ伝え、そのことが新約聖書「使徒の働き(使徒言行録)」の中で、さらには、弟子たちによる「書簡」の中で誠実に記述されています。これら福音書・使徒の働き・使徒書簡らの中の歴史的記録、時代状況、地理的・文化的・生活的記述は他の一般の歴史書、地誌、博物誌などで、その正確性が裏付けられています。従って、イエス・キリストその方についての聖書の記述も信憑(しんぴょう)性があるものと評価されねばなりません。
AD55年ごろから120年ごろの著名な歴史家タキトゥスは、その著『年代記』(第18巻)の第15巻44章において次のように述べています。
「民衆は『ネロが大火を命じた』と信じて疑わなかった。そこでネロはこの風説をもみ消そうとして、身代わりの被告をこしらえ、これに大変手の込んだ罰を加える。それは、日頃から忌まわしい行為で世人から恨み憎まれ、『クリストゥス信奉者』と呼ばれていた者たちである。この一派の呼び名の起因となったクリストゥスなる者は、ティベリウス帝の治世下に、元首属吏ポンティウス・ピラトゥスによって処刑されていた。・・・」
堅実な資料に基づくタキトゥスのこの歴史書でこのように記述されていることからも、イエス・キリストの実在と刑死の事実が裏付けられています。
しかし、何よりも、あれだけ強く宣べ伝えられ、あれだけ急速に広まったこと、ローマ帝国の250年間の迫害にかかわらず伝播(でんぱ)したことが、イエスの実在性、十字架と復活の歴史性を雄弁に物語ります。架空の存在や虚構の事実からは、そんなことにならないでしょう。
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