店舗型フードバンク
台湾・中華基督教救助協会(以下、救助協会)では、新たな取り組みとして、店舗(ショップ)型のフードバンクを開始した。
2カ月に1度行われるフードバンクは、前回も紹介したように、教会が家庭を訪問して必要なものを届けに行くが、これは対象者(行政や自治体から情報を得た生活困窮者や貧困家庭)が自ら必要なものを購入しに来る仕組みだ。
まず、対象者の家庭を牧師が訪問し、家の状況を把握して信頼関係を築く。そして、対象者に毎月500ポイントを支給する。
店内には、食料品や最低限必要な日用品が陳列されている。値札の代わりにポイントが表示されており、持っているポイントの範囲内で交換することができる。利用者はポイントを確認しながら、必要なものをカゴに入れていく。ポイントは月内に使い切らなければならず、余っても翌月に繰り越されることはない。実際にこのショップには100人近い人が訪れるという。
また、乳幼児がいる家庭には、粉ミルクがポイント消費なしで1つ無償提供され、介護が必要な家庭には大人のオムツなどが同様に支給される。状況に応じて300ポイント加えることもあるという。救助協会では、支援のマンネリ化を防ぐため、家庭への支援は半年間と決めており、その上で必要に応じて更新している。
ちなみに、このショップのすぐ裏には蘆州礼拝堂(邱大信牧師)という大きな教会があり、この救助協会の働きが教会を中心に行う活動であることを示していた。この地域にある13教会のうち8つの教会がこの活動に協力しており、連合祈祷会を通じて情報交換を行っているという。
伝道集会ではなく一致した社会活動で成長
救助協会の創設者・代表(秘書長)で牧師でもある夏忠堅氏に、同協会がどのように国内のさまざまな教会と一致して活動するようになったのかを聞いた。
1990年に「台湾福音促進会」という超教派の集まりが発足した。ほとんどの教派が加盟し、そのリーダーは2カ月に1度は会議、1年に1度は総会を開き、目標に向けて祈ってきたという。
しかし、大きな伝道集会を開催するために各教会が協力し合っても、その後、教会に信徒や求道者が増えることはなかったという。ただ、そのことを通して福音促進会と教会との協力関係がしっかりと築かれたことは大きな収獲だった。
1998年、福音促進会を経て、現在の救助協会が設立された。そして、その翌年に台湾大地震が発生したのだが、その時、台湾の教会は皆、「救助協会」として統一した看板を掲げたという。クリスチャンでない人にとって「○○教団」といった教派の看板は必要ないからだ。その結果、1980年は人口の2・2パーセントだったクリスチャン人口が、現在は5・6パーセントまで成長した。
救助協会は、フードバンク、児童福祉支援、重大災害支援、緊急生活支援という4本の柱で活動している。「大宣教命令」と「隣人愛」の精神をモットーにしたキリスト教主義の社団法人だ。それぞれの取り組みは、入念なリサーチのもと、対象世帯の情報をデータベース化し、必要な世帯に適切な支援を行うのが同協会の特徴でもある。スタッフは最初、1人だったが、今では80人まで増えた。
昨秋、救助協会は、台湾全土を自転車で走って募金を集めるチャリティー運動を行った。その取り組みが、クリスチャンだけでなく、教会と関係のない企業や個人の心も動かし、自ら進んで物資の提供を行ってくれるようになったという。聖書の愛の実践が本物であることを地域に証明した結果だ。
救助協会には、さまざまなところから物資や食糧の支援が来る。この冬には、メーカーから毛布が献品され、必要を満たすことができたという。必要に応じてそれを配布したり、社内で販売して、その収益を活動資金に充てたりする。
また、台湾のファミリーマートでカードを購入すると、記載された商品(多くは食料品)が救助協会へ寄付される仕組みを作り、そのシステムが全土に導入されると、すぐに目標額が集まったという。
このように台湾の救助協会の行っているような活動が日本でも浸透していき、教会が中心となるフードバンクや児童福祉が始められることを心から期待したい。